『ハコヅメ』圧勝の理由は軽快な掛け合いと構成 脚本・根本ノンジは原作をどう変換した?

『ハコヅメ』笑いと原作の再構成が勝因?

 今期ドラマ内でも高視聴率を記録し、圧倒的人気を誇っている水曜ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ系)が9月15日に最終回を迎える。中盤は主演の永野芽郁が新型コロナウイルスに感染してしまった影響で特別編に差し代わるなどのハプニングがあったにもかかわらず、物語に不備もなく有終の美を飾ろうとしている。

 本作は泰三子による漫画『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』(モーニングコミック)を原作としたドラマとなっていて、内容や設定も比較的漫画に忠実に進んでいく。しかし、それでも“まんま”実写化しただけでなく、しっかりと原作の雰囲気の範疇内で物語をより短期的なものにまとめ抜いた根本ノンジの脚本力をひしひしと感じさせる出来なのだ。ここにも、ドラマがここまで愛されてきた要因が隠されているかもしれない。

原作漫画との違い

 ドラマも原作も、パワハラが原因で飛ばされてきたエースの藤(戸田恵梨香)と新人警察官の川合(永野芽郁)がペアを組み、女性警察官としての日々や警察内部のあるあるが展開されていく。これは、原作者の泰三子が県警に勤めて10年になる自身の女性警察官時代の経験を元に描いている。そのため、他の警察官モノと比べてハードボイルドさがなく、ごくごく日常的なテンションになっているのが大きな特徴だ。特に藤と川合の兼ね合いが微笑ましく、極めて男性社会的な警察というフィールドでシスターフッドを発揮してお互いを支え合う、良きバディものでもある。

 そんな本作の原作とドラマの大きな違いは、“構成”だ。大局的には、川合が先輩の藤に感化され立派な警察官になることを志す点で同じであるものの、第1話で警察を辞職することをやめようと思ったきっかけが大きく違う。漫画でも同じように辞表を握りしめる川合だったが、実はその後に来る展開がドラマ第6話で描かれた小学生への交通指導になっている。ルールを守ることの意義を自分の言葉で子供たちに教えられたこと、そしてそれを藤に褒められたことから「もう少し頑張ってみようかな」となる川合。一方、ドラマでは「今から自殺する」と何度も酔って通報する坂本太郎(森田甘路)のエピソードが代わりとなって描かれた。この話は漫画では3巻に登場するはずのものだった。しかし、このインパクトの強い経験を第1話に差し替えたことで、ドラマに大きな筋道をもたらすことができたように思う。

 そう、漫画はなんとなく前後の話が繋がっているが、基本的に日々の出来事がオムニバスに近い形で展開されている。しかし、ドラマ版はそこにより「川合の成長物語」という大きな柱を据えたうえで、原作の展開や流れを変えて構成し直しているのだ。

 脚本家の根本はそういった構成の意図に関して、公式インタビューで以下のように語っている。

「原作のコミックスがめちゃくちゃ人気なんですけど、初期のころは一話完結の“交番の日常”みたいな話が続くんです。それをドラマ化すると各話だいたい10分を切るくらいになってしまう。そうなると残りの40分はオリジナルのエピソードで作ることになって、漫画の世界観と変わってしまうことがある。もちろん面白くなる場合もあるし、そういうドラマもいっぱいあるけど、『ハコヅメ』に関しては面白いエピソードがたくさんあるので、いろんなエピソードを一つのストーリーとしてつなげた方がいいな、と。その上で、登場人物たちの気持ちの流れがきちんと起承転結できるように構成していく。だから話のつながりが難しかったりするんです」

 例えば、ドラマ版で川合が警察官として大きく成長したきっかけになった、第3話の女子高生が被害者となった痴漢事件の事情聴取。あのくだりは漫画だと、西野七瀬演じる牧高がしていたもので、彼女が自分の失敗に気づくエピソードなのだ。川合はその中の似顔絵作成で助太刀する形で登場する(これはドラマでも見せ場になっていた)。他にも、山田(山田裕貴)が主人公として展開される話もあるなど、原作漫画は川合を中心に時々視点が変わるようになっている。それを、ドラマ版では川合のみの視点、川合のみの成長物語に徹底し、周りの登場人物を彼女のサポート役にさせたことで物語として一気に締まり、まとまることができたのである。



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