『TOKYO MER』が伝えた“善悪を超えた価値” 最終話はかつてない人間賛歌に

『TOKYO MER』最終話は人間賛歌に

※以下の文章にはドラマ本編の内容に関する記述が含まれます

 これまでの全てはこの1話のためにあった。『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)最終話は、命を救うことへの深遠な問いを残して幕を閉じた。

 涼香(佐藤栞里)を失い、喜多見(鈴木亮平)は生きる力をなくしていた。椿(城田優)の狙い通り、喜多見は医師として再起不能な状態に陥り、MERのメンバーの前でも弱気な発言が口をついて出る。「俺たちがやっていたことは本当に正しかったんですかね」。両親に続いて妹も救えなかったことで、喜多見は自分を責めていた。そんな中、TOKYO MERの処遇をめぐって厚労省の最終審査会が開かれる。幹事長の天沼(桂文珍)は、献金疑惑に対する世間の目を逸らさせるため、審査会で音羽(賀来賢人)に喜多見とテロリストの関係を証言させ、大々的にマスコミに報道させようとしていた。審査会でMERの存続を訴えようとするMERのメンバーを音羽は制止し、MERと関係を絶つように告げる。時あたかも同時刻に世田谷の政府施設で爆発が起き、MERに出動要請が寄せられた。

 最終話にして描かれたヒーローの挫折。さっそうと災害現場に駆けつけ、「死者ゼロ」を達成してきた喜多見の心は、涼香の死によって完全に破壊された。一方で、チーフのいないMERのメンバーは災害現場で懸命に救護に当たるものの、かつてない爆弾テロを前にして次々と傷病者が運び込まれ、処置を待つ人々で現場は凄惨を極める。その様子を知った音羽は用意していた証言を取りやめて話し出す。居並ぶ政治家や厚労省のトップを前に音羽が発した言葉。「彼らはヒーローなんかじゃありません。MERのメンバーは単なる医療従事者です」から始まるそれは、かつて喜多見が発したものでもあった。青筋を立て、眉間にしわをよせる天沼や白金厚労大臣(渡辺真起子)の眼前で、音羽は「MERは存続させるべきだ」と言い放つ。

 音羽の変心は何だったのか。涼香は音羽の将来を案じて、久我山(鶴見辰吾)に喜多見の過去を話した。音羽は、犠牲になった涼香の思いに応えることが自分の務めだと思ったはずだ。しかし、そうではなかった。音羽を変えたのは、子どもたちからMERに届けられたたくさんの絵と涼香が添えた「誰かのために頑張るMERのみんなが大好きです」という言葉で、助けを待つ人々を目にした時にその真意がはっきりと伝わったのだ。涼香は誰かのために頑張る音羽が好きだったのであり、音羽が官僚として出世することが多くの人を救うことになると考えたから、兄を裏切ってでも音羽を助けようとしたのだ。そうだとしたら、音羽が今すべきことは誰かのために頑張ることと、誰かのために頑張る人を助けることだ。喜多見が口を酸っぱくして言っていた意味を、音羽ははっきりと理解した。



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