『プロミス・シンデレラ』因縁の四角関係の行方は? 松井玲奈演じる菊乃の孤独な愛
「大事なのってどうすればいいかじゃなくて、お前がどうしたいかじゃねぇの?」
早梅(二階堂ふみ)の気持ちが明確になった『プロミス・シンデレラ』(TBS系)第9話。
“ヘビ女”こと芸者の菊乃(松井玲奈)の画策が、彼女の狙いと反して、早梅と成吾(岩田剛典)ではなく壱成(眞栄田郷敦)との距離を急接近させた。
年齢差を気にする早梅に「そんなの関係ねぇ」と即答し、彼女の中での懸念事項を一つずつ潰していき、サイコロゲームなしのデートに誘う。しまいには「抱きしめていい? 嫌ならしないけど」とどんどん距離を詰めていく壱成。早梅がこの旅館を去ってしまいかねないことにも思いを馳せ、もはや成吾よりも早梅の行動パターンや心理が読めている。
一気に積極的になった壱成のたくましい成長ぶりが観られた一方で、気になるのはやはり菊乃の思惑、真意だろう。「私はシンデレラに出てくる魔法使いなの。10年前に結ばれなかった王子様とシンデレラのために魔法をかけてあげた」と、自分のことをおとぎ話の“魔法使い”に例えるなんて、一体どんな人生を歩めば、他人同士が結ばれるためにお膳立てする役割に自己投影するようになるのだろうか。それも王子様は自分が恋い慕う相手・成吾なのだ。「私はあなたと成吾が結ばれてくれれば何でもいい。あなたを幸せにできるのは成吾だけよ」と早梅のことを説き伏せようとし、何としてでも2人をくっつけたがる。
整形して別人になり名前も変えて成吾の前に現れた時には、彼が今の自分を好きになってくれると少しは菊乃だって期待したのではないだろうか。それでも、ずっと成吾の心の中には別の相手がいる、それが早梅だったのだろう。姿形を変えて、今や宴会の予約もいっぱいの人気芸者に上り詰めたって、どれだけ旅館『かたおか』に貢献したって、恋焦がれたたった一人の男の“特別”になれないのは、歯痒く何より苦しい時間だっただろう。他の異性が自分に好意を寄せてくる度に、ますます彼女にとって成吾の存在がどれだけ大きくかけがえのないものなのか自覚させられるばかりで、他人からの好意にむしろ心を凍らせていったのではないかと思う。
早梅の元夫・正弘(井之脇海)は彼女について、「寂しそうだったから。心を閉ざしてるように見えた。誰かを信じたいとか愛されたいとか諦めているような」とそのさまを形容していたが、美しく生まれ変わった自分をもってして、どれだけ一途に想いを寄せても今目の前にいない相手の記憶を越えられない、塗り替えられないというあまりに苦い経験が彼女をそうさせているのかもしれない。“どうして私じゃダメなの?”“私だとあなたを幸せにできないの?”と菊乃はどこかで思ったこともあるだろうが、成吾の前で口に出したことはあるのだろうか。自分では決して引き出せない成吾の笑顔や愛しそうな眼差しをいとも簡単に手にできてしまう早梅が、あろうことか成吾からの好意をすぐに受け入れてしまわないことにも言いようのない虚しさや苛立ちを覚えるのだろう。そんな早梅が、自分にも簡単になびくような男・正弘のものになってしまったのでは、自分の存在がいたたまれなくなってしまう。