秋クールも話題アニメ続々 『先輩がうざい後輩の話』など注目作をピックアップ

 2021年のテレビアニメシーンも10月から順次スタートしていく秋クールの放送を残すのみとなった。冬・春・夏とオリジナルアニメ作品がヒットを飛ばし、アニメシリーズ化されている2期作品や外伝作品も多く放送されてきた。

 来期放送されるアニメでは、2期や2クール目となる『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』(TOKYO MXほか)、『86-エイティシックス-』(TOKYO MXほか)、『異世界食堂』(テレビ東京ほか)や、メディアミックスの流れで制作された『takt op.Destiny』(テレビ東京系ほか)、『プラオレ!〜PRIDE OF ORANGE〜』(とちぎテレビほか)、『Deep Insanity THE LOST CHILD』(未定)などが控えている。

 本稿ではそのなかでも筆者が特に注目する3作を紹介していきたい。まずは、SNSを中心に話題を呼んできた『先輩がうざい後輩の話』(TOKYO MXほか)だ。2017年9月18日にTwitter及びpixivにて4ページ漫画とし発表され大きな反響を得て、Twitterマンガでは2017年最高のお気に入り数を記録し、「次にくるマンガ大賞2018 Webマンガ部門1位」を獲得。2018年7月6日より一迅社のWebコミック配信サイト『comic POOL』で連載・書籍化されて以降、著者のしろまんたによるSNSでのユニークな言動とともに人気を博してきた。

『先輩がうざい後輩の話』(c)しろまんた・一迅社/先輩がうざい製作委員会

 『ヲタクに恋は難しい』(フジテレビ)、『極主夫道』(Netflix)、『うらみちお兄さん』(テレビ東京ほか)、『月曜日のたわわ』(YouTube/ニコニコチャンネル)、『がんばれ同期ちゃん』(未定)など「ネット発マンガ作品」のアニメ化が大きなく話題を集めており、本作品もその一つだ。

 入社3年目で仕事に奔走する小柄な五十嵐双葉と、先輩社員で頼りになるがガサツで大柄な武田晴海を中心にしたラブコメ作品であり、五十嵐の先輩社員にあたる桜井桃子や風間蒼太、友人の黒部夏美らを含めた群像物語としても楽しめる。

TVアニメ「先輩がうざい後輩の話」PV

 監督は『アイカツスターズ!』(テレビ東京系)、『プリティーリズム・レインボーライブ』(テレビ東京系)などで作画監督・絵コンテを担当してきた伊藤良太が初監督を務め、『プリキュアシリーズ』で数多くの脚本・シリーズ構成を担ってきた成田良美が参加している。

 テレビアニメ作品の事前情報としては少し珍しく、先んじて総作画監督として室田雄平、吉川真帆、中川洋未、武藤幹の4名がクレジットされている。室田雄平といえば、『ラブライブ!』(TOKYO MXほか)や『ラブライブ!サンシャイン!!』(TOKYO MXほか)キャラクターデザインと総作監であり、現在放送中の『ラブライブ!スーパースター!!』(NHK Eテレ)キャラクターデザイン原案としても参加しているアニメーター。作画監督としても多くの作品で参加していた4人を配したクオリティに期待ができそうだ。

 本作のアニメ制作は動画工房だ。室田は「動画工房スタッフの皆様によってクオリティーが支えられてる」とTwitterでコメントしている。動画工房が手掛けた作品と言えば、『ゆるゆり』シリーズ(テレビ東京系)、『NEW GAME!』(AT-X・TOKYO MX)、『恋する小惑星』(AT-Xほか)といった「まんがタイムきらら」系の作品を思い出すアニメファンも多いと思う。

 それに加えて、『月刊少女野崎くん』(テレビ東京系ほか)、『多田くんは恋をしない』(TOKYO MXほか)、『ダンベル何キロ持てる?』(AT-Xほか)、『放課後ていぼう日誌』(AT-Xほか)なども手掛けてきており、原作を忠実に再現しようとする脚本や演出に、可愛らしいキャラクターを活き活きとコメディタッチに描かせれば随一の作画スタッフを揃えており、本作品の作風にもピッタリではないだろうか。

 コメディタッチな作風で女性キャラクターを動かす作品だけでなく、命を賭して戦うキャラクターを作劇する戦闘美少女モノ作品も秋クールにはある。2本目にあげるのは、これまで2作のアニメ作品とゲーム作品を制作してきた『結城友奈は勇者である』の最新作『結城友奈は勇者である 大満開の章』(TBS系)だ。本作は謎の怪物「バーテックス」からの攻撃を防ぐため、「勇者」へと変身し命を賭して戦う少女達を描いた物語で、過去に「新日常系」「ポストまどマギ」とも評された。『勇者であるシリーズ』として多数のノベル・ゲーム作品が制作されており、既存作品をミックスしたようなストーリーになるのか、それともアニメ作品用の完全オリジナルストーリーとなるのかも気になるところだ。

 監督には岸誠二、シリーズ構成・脚本は上江洲誠と、これまでシリーズ作品すべてに関わってきた2人が変わることなくタクトを振るう。アニメーションキャラクターデザインには酒井孝裕、音楽は岡部啓一・MONACAが担当し、アニメーション制作を担うのはStudio五組。動画工房と同様に『きんいろモザイク』(AT-X・TOKYO MXほか)や『Aチャンネル』(TBSほか)といった「まんがタイムきらら」系の作品を制作し、柔らかなタッチと作劇で多くの作品を出がけてきた。2010年代の日常系アニメ作品を手掛けてきた1社と言って良いだろう。

 2014年にアニメ作品が発表されてから今年で7年目。続編を続けるロングラン作品だと、アニメ制作会社や監督らが変更となったり、完全に退くこともあるのだが、一貫した体制で臨もうという姿勢には、本作スタッフ陣の非常に強い信念を感じる。

 2021年4月にはアニメ『結城友奈は勇者である ちゅるっと!』(毎日放送・TBS系列)が放送され、ゲーム『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』に登場するキャラクター27人が全員登場、ゆるいムードのショートアニメとして作品の盛り上げを担っている。

 本作品のストーリーを良く知る人なら、この「ゆるふわなムード」を先んじて届けていることや、加えて『大満開の章』PVで「私たちは普通の女の子に戻ります!」と開口一番に言っていることに、何かしらのトリックやメッセージが含まれているのでは? と勘繰ってしまいそうだ。

 これまでの作品と同様の、惨いまでの死と絶望を描くのか、それとも本当にゆるやかに続く幸福な日常を描くのか、いずれにせよStudio五組はこれまでに描いてきた作風・アニメーションを十全に発揮してくれるだろう。そこにゲーム作品を通じてよりキャラクターを咀嚼し演じてきた声優陣も加われば、今作は本作品シリーズにとっての到達点になりえるはず。2021年のいまにどういったインパクトを残してくれるのかは非常に楽しみだ。

TVアニメ「結城友奈は勇者である -大満開の章-」PV

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