秋クールも話題アニメ続々 『先輩がうざい後輩の話』など注目作をピックアップ

 最後は、2021年秋アニメで最注目とも言えよう『ブルーピリオド』だ。『アフタヌーン』にて好評連載中で、単行本累計発行部数は300万部を突破し、マンガ大賞2020では見事大賞に選ばれたマンガ作品が、満を持してのアニメ化ということもあり、どのようにアニメーション化されるのかが期待されている。

 早慶にも合格できるほどに成績優秀だが、酒もタバコもたしなむ素行不良な高校生・矢口八虎が、美術室で見かけた絵画をきっかけに絵に目覚め、日本一の受験倍率を誇る東京藝術大学を目指して努力し、さまざまな苦悩や失敗を糧にして成長していく青春劇だ。

 筆者の山口つばさ自身も東京藝術大学を卒業しており、自分が受験生の頃に予備校に通っていた経験など、自身が体験した苦悩やリアリティなどが作品内にフィードバックされている。芸大を目指す中高生を中心に、どことなく理解されがたい「美術・美大の独特な世界」を感じとるにはピッタリという評価も多い。

 総監督には『かみちゅ』(テレビ朝日ほか)、『マギ』(TOKYO MX)、劇場版アニメ『宇宙ショーへようこそ』で監督を務めた舛成孝二、監督に浅野勝也を起用。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(TOKYO MXほか)、『猫の恩返し』、『映画 聲の形』、『けいおん!』(TBS系)など多数のヒットアニメのシリーズ構成・脚本を担ってきた吉田玲子が起用されており、「青春群像劇」な原作のストーリーラインを的確に捉えた脚本に仕上げてくれるだろう。

【2021年10月放送】TVアニメ『ブルーピリオド』 第1弾PV

 本作が「絵の表現」に対して何度となくチャレンジしていることをみれば、やはりアニメーションでどのような表現ができるのか注目したい。美術監督に仲村謙と金子雄司、美術設定にも緒川マミオと中島美佳、放送前の段階で2人体制として明記されているあたり、違った狙いを感じてしまう。

 金子雄司といえば、アニメーション美術スタジオ「青写真」の代表として携わり、『キルラキル』(TBS系)、『サカサマのパテマ』(WOWOWプライムほか)『ブレードランナー ブラックアウト2022』(YouTube)や、昨年末に公開され話題を呼んだアニメ映画版『ジョゼと虎と魚たち』でも美術監督を務めてきた。

 先に挙げた作品群以外にも、どこか現実世界とは違った世界観・背景を手掛けることが多いが、『ジョゼと虎と魚たち』では愛染坂などを筆頭に、大阪や兵庫の街並みをキレイにアニメーション背景に落とし込んで見せた。本作も現実世界とリンクしている部分が数多くあり、現実とリンクした背景がどのようなタッチで描かれるかは注目すべきだろう。

■放送情報
『先輩がうざい後輩の話』
TOKYO MXほかにて、10月9日(土)スタート 毎週土曜25:00〜放送
キャスト:楠木ともり、武内駿輔、早見沙織、土田玲央、青山玲菜、堀江由衣、古賀葵
原作:しろまんた(一迅社『comic POOL』連載)
監督:伊藤良太
シリーズ構成:成田良美
キャラクターデザイン:阿部慈光
総作画監督:室田雄平、吉川真帆、中川洋未、武藤幹
プロップデザイン:中島絵里
美術監督:鈴木俊輔
色彩設計:伊藤裕香
撮影監督:桒野貴文
編集:木村佳史子(MADBOX)
音響監督:高寺たけし
音楽:堤博明
アニメーション制作:動画工房
(c)しろまんた・一迅社/先輩がうざい製作委員会

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