パオロ・ソレンティーノ節全開! 『ニュー・ポープ 悩める新教皇』を彩る音楽造形の深さ
本作のサントラは、クラシック音楽や教会音楽など荘厳な音楽とモダンなダンス・ミュージックを組み合わせているのが特徴だ。聖と俗が入り混じって、挑発的で崇高な世界を生み出す。それがソレンティーノのスタイルだ。フランスのエレクトロ・ユニット、カシウス。アメリカのロック・バンド、ゴシップのヴォーカル、ベス・ディットーの曲なども使われているが、エンディングで登場人物たちが曲に合わせてダンスを披露するという演出も楽しい。
また、ジュリアナ・バーウィック、グルーパーといったアンビエント・ミュージックの新鋭たち。ニルス・ファームやニコ・マーリーといったネオクラシカルなミュージシャンの音楽も使用されていたりと、映画以上に音楽は多岐にわたっている。それでいて不思議な統一感があり、そこにヨーロッパ的なエレガントさを感じさせるのは、同じくサントラにこだわりを感じさせるルカ・グァダニーノ監督(『君の名前で僕を呼んで』など)に通じるところがある。
また、ブラノックスのキャラクターからも、音楽好きのソレンティーノらしいこだわりが伝わってくる。ブラノックスはロック好きで、教皇にならないか? と口説きにきたヴォイエッロに「教皇になったらマリリン・マンソンに会えるかな?」と冗談交じりに尋ねる。そして、その後、マリリン・マンソンが本人役で出演。ヨハネ・パウロ3世に謁見するというサプライズ演出で楽しませてくれるが、このロック愛がシリーズ後半に思わぬ形でヨハネ・パウロ3世を救うことになる。
バチカンを舞台にした教皇の物語、と聞くと重厚なドラマを想像するが、ソレンティーノの手にかかれば溜息が出るほどグラマラスだ。ジャンルを超えた多彩な音楽が物語を彩り、イタリア映画を支えてきた伝説的な撮影スタジオ=チネチッタで細部にまでこだわった作られた美術や衣装は豪華絢爛。そんななか、カリスマ性を発揮して信者を熱狂させる教皇は、まるでロックスターのような存在だ。そんな描き方からは、権力や宗教など人々を惹きつけるものはセクシーであらねばならない、というソレンティーノの美意識が伝わってくる。そして同時に、権力、信仰、愛など様々なテーマについてウィットに富んだ語り口で掘り下げていく本作は、ソレンティーノの鬼才ぶりがたっぷりと味わえる傑作だ。
■作品情報
『ニュー・ポープ 悩める新教皇』 (全9話)
シリーズ前作『ヤング・ポープ 美しき異端児』とあわせて「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にて、全話独占配信中
監督・脚本・製作総指揮:パオロ・ソレンティーノ
製作総指揮:ジュード・ロウ ほか
出演:ジュード・ロウ、ジョン・マルコヴィッチ、リュディヴィーヌ・サニエ、セシル・ド・フ
ランスほか
(c)Wildside / Sky Italia / Haut et Court TV / Mediaproducción 2019.
『ニュー・ポープ 悩める新教皇』 公式サイト:https://www.star-ch.jp/drama/youngpope/sid=2/p=t/
字幕版 配信サイト
:https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0911RTS1P/ref=atv_dp_share_cu_r
吹替版 配信サイト
:https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B095GYHJD4/ref=atv_dp_share_cu_r