なぜNetflixの恋愛リアリティショーは当たる? 提示する道徳に反して映す皮肉
アメリカではとにかくリアリティショーの人気が高く、出演者は一般人から突然セレブリティになる。『ラブ・イズ・ブラインド』も例外ではない。後日談エピソードで最も顰蹙を買った出演者のダミアン・パワーズや、番組トップのモテ男マット・バーネットは先日アトランタのHAVANA CLUBの25周年記念パーティにゲストとして登場するなどすっかりインフルエンサーとして活躍している。エピソードが配信されればトレンド入りは確実であるなど、国民的にお馴染みで、注目されているジャンルといっても過言ではないのだ。
そういったビッグマーケットを意識してNetflixはたくさんの恋愛番組を生み出してきた。しかも、ほとんどが「真実の愛」に言及するものであり『ザ・ジレンマ:もうガマンできない?! 』もまた「体ではなく心を通わせて愛を見つけろ」的なモットーで番組が運ばれていった。Netflixはそういう道徳的なメッセージのリアリティショーが大好きなのだ。ただ、口ではそう謳うものの蓋を開けてみると中身は決してそうではないのが、肝である。というのも、『ラブ・イズ・ブラインド』でマッチング後に破綻したカップルには、明らかに男性がタイプではなかったため“(性的に)男として見られない”と顔に書いて過ごす女性が他のカップルのイケメンを狙って一悶着あったり、『デーティング・ビースト』では「好きなタイプは?」と聞かれてほとんどが性格に言及しつつも「デカイ尻」「デカイ乳」といった外見の(性的な)ルックスのタイプを答えたりした。
要するに、どれだけ「真実の愛」と尊い言葉を口にしたところで、人は簡単に性的な欲望に抗えないのではないか、というアイロニーをNetflixは余さず映しているのだ。『ジレンマ』なんて、まさにその実験の末に「どうにでもなれ!」と欲望のままキスをし、性行為に及ぶカップルをまざまざとカメラに収めて「これが現実です」と言っているような番組である。その皮肉こそ“真実”であり、だからこそ人は“リアリティ”番組に対して、時に共感し熱中してハマるのだろう。そしてNetflixはその視聴者を的確にターゲティングし、『ラブ・イズ・ブラインド』の後日談に『ジレンマ』のキャストを出演させるなど双方の番組のファン作りまで手を抜くことがない。そうして綺麗事と汚い真実の塩梅をうまく加減して世に放つことでビューを獲得し、新たなショーを次々と作る予算が生まれていると考えられる。
もちろん、Netflixだって「真実の愛」が見たいし映したいに決まっている。実際、『ラブ・イズ・ブラインド』でゴールインしたカップルは、後日談で本当に幸せそうでこっちがもらい泣きしたくらいだ。あれはまさに「真実の愛」である。製作側も何度もあらゆる番組でゲスいことをしたり、感動的な演出をしたりとトライアンドエラーを繰り返しながら、「真実の愛なんてない」と思いつつそれを探しているわけだ。冒頭で触れたロシュフコーの言葉が指すものは、もしかしたら現代の恋愛リアリティショーの存在そのものなのかもしれない。
■配信情報
『ラブ・イズ・ブラインド ~外見なんて関係ない?!~』
Netflixにて独占配信中
■配信情報
『デーティング・ビースト 〜恋は内面で勝負!〜』
Netflixにて独占配信中
■配信情報
『5ファースト・デート』
Netflixにて独占配信中
■配信情報
『ザ・ジレンマ:もうガマンできない?! 』
Netflixにて独占配信中