なぜNetflixの恋愛リアリティショーは当たる? 提示する道徳に反して映す皮肉
かつてフランスの文学者、フランソワ・ド・ラ・ロシュフコーはこう言った。「真実の愛は幽霊みたいなものだ。皆がそれについて話すが、それを見た人はほとんどいない」それでも、幽霊を一目見ようと地図上で燃える曰くつきの廃墟を訪れる者もいれば、真実の愛を掴もうと奮闘する者もいる。私たちは、“それ”が見たい。だからこそ、愛をテーマに掲げ追い求める人々を捉える昨今の恋愛リアリティショーは国境をまたいで世界中で人気を誇っているのではないだろうか。
真実の愛と人生の伴侶を求めた独身の男女が集まり、ポッドと呼ばれる個室で数日間顔を合わせることなく会話だけをして結婚相手を見つけるNetflixオリジナル『ラブ・イズ・ブラインド ~外見なんて関係ない?!~』の後日談エピソードが先日配信された。昨年、コロナウイルスが猛威をふるい世界中でロックダウンが続いた頃に配信されたシーズン1では、外見に左右されず対話のみを通して人は愛を見つけることができるのか、「本当に愛は盲目なのか」という番組タイトルをなぞるような命題を体当たりで解き明かそうとした。結果、複数のカップルが実際に結婚。後日談では結婚2年目で順調な夫婦生活を送っている彼らと、残念ながらシングルに戻ってしまったほかキャストが再会するパーティの様子が映され、波乱万丈なものとなった。
このリユニオンエピソードの配信と時を同じくして、Netflixでは『デーティング・ビースト 〜恋は内面で勝負!〜』というイギリス発の恋愛リアリティショーが登場。これはなんと対面はするものの、非常に凝った特殊メイクを顔に施した状態でデートをする相手を見つけるというマッチング企画となっている。原型を留めないマスクを被った彼らの素顔は全く予想もつかない。こちらも『ラブ・イズ・ブラインド』と同じ「真実の愛は見た目で選ぶものではない」という道徳的テーマを提示していくコンセプトではあるものの、結婚に比べては非常にカジュアルな雰囲気なのと短い期間でサクッと相手を見つけるスタイルになっている。どちらというと、恋愛リアリティショーとしてはNetflixシリーズの『5ファースト・デート』の方が感覚的には近い。
また、顔こそは見えないが体型などはバッチリ視認できるので本当に “見た目の好みを無視した内面のチョイス”ができるものかというと、首を横にふらざるをえない。そして同じコンセプトを持ちつつも、『デーティング・ビースト』は日本でもトップ10入りを果たした『ラブ・イズ・ブラインド』ほどのヒットに至らなかった。その原因は、やはり“それでも真実の愛を信じる”視聴者側の深層心理に追及するかしないかの違い、そしてキャストの人気度の違いだろう。