映画『SLAM DUNK』を井上雄彦が手がける理由とは? 最新技術を駆使した再現性への期待

 8月13日に映画『SLAM DUNK』(タイトル未定)のティザー動画が公開された。映像自体は、白地にスタッフの名前が次々と映し出されるなか、円陣を組んだ湘北高校バスケット部メンバー5人のラフ画が重なるという時間にして30秒のごくシンプルなものだ。発表されたスタッフはキャラクターデザインと作画監督に江原康之(『進撃の巨人』など)、演出に北田勝彦(『進撃の巨人』など)、CG監督に中沢大樹(『ONE PIECE FILM Z』など)、音響監修に笠松広司(『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』など)、美術監督に小倉一男(『進撃の巨人』など)ほか、錚々たる顔ぶれが並んでいる。だが、もっとも目を引いたのは、その中心に座するクレジット「監督/脚本 井上雄彦」だろう。

映画『SLAM DUNK』(タイトル未定)【2022年秋公開】
(c) I.T.PLANNING,INC. (c) 2022 SLAM DUNK Film Partners

 言うまでもなく『SLAM DUNK』とは、1990年から1996年にかけて週刊少年ジャンプ誌上で連載され、シリーズ累計発行部数は1億2000万部を超える井上雄彦による人気漫画だ。連載当時にも1993年から1996年にかけて全101話のテレビシリーズと4作の劇場版が制作されている。そして今年の1月、新作アニメーション映画の制作が発表された際には、SNS上で「なぜいま『SLAM DUNK』をアニメ化するのか?」という疑問の声も散見された。今回のティザー映像で最初に映し出された
「監督/脚本 井上雄彦」は、その疑問に対する答えではないだろうか。

「そんな広いコートがあるかよ」「どこまでいくんだよ」「おいおい歩いてんじゃん」

 これは井上雄彦の漫画『リアル』の主要キャラクター高橋久信が、病室でバスケットボールをしているアニメを観て言った台詞だ。連載当時ファンの間で、これはかつてのアニメ『SLAM DUNK』のことではないか、と話題になった。井上雄彦の真意は不明だが、確かにアニメの技術や表現が進歩した現在の眼で、当時のテレビシリーズを再見すると厳しい点もある。

 前述したように『SLAM DUNK』がテレビアニメ化されたのは90年代半ば。すでに80年代のアニメブームや、様々なジャンルの作品を内包したOVAの勃興を経ていたとはいえ、いまほどアニメを楽しむ人々は多くなく、まだ一般的にテレビアニメは“少年向け”との認識が強かった。エピソードが原作漫画に追い付いてしまわないように、アニメのオリジナル展開を入れたり、エピソードの枝葉の部分を引き延ばすなど、原作漫画とアニメは別物、とまではいわないが、アニメはアニメとしてのルックや内容が寛容されていた時代だ。

 もちろん当時も真剣に制作されていたとは思うが、現在ほど原作漫画の再現性にこだわった作品は多くなかったように思う。ましてや単行本で読み返すと一目瞭然だが、漫画『SLAM DUNK』連載中の井上雄彦の画力の向上はすさまじく、リアリティと外連味を両立させた後半の画を再現することは、当時不可能だったのではないだろうか。

 それから25年が経過して、アニメの技術や表現は遥かに成熟した。近年、『週刊少年ジャンプ』発の漫画では『ONE PIECE』、『ドラゴンボール』、『僕のヒーローアカデミア』、ほかにも『名探偵コナン』など、近年原作者が自作のアニメ化、特に劇場作品においては深く関わり、それが評価や興行面の成功につながるケースが増えてきている。だが、その多くは監修やキャラクター原案などであり、脚本とさらに監督も務めるのは極めて稀なケースだ。だからこそ「監督/脚本 井上雄彦」のクレジットは、いまなら、あの『SLAM DUNK』をアニメで再現できる、という決意表明ではないかと思うのだ。



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