『不滅のあなたへ』が絶大な支持集める理由 豪華クリエイター陣による手腕を紐解く
現在放送中のアニメ『不滅のあなたへ』(NHK Eテレ)は、『聲の形』で知られる大今良時の漫画を原作に、監督・むらた雅彦、シリーズ構成・藤田伸三、主題歌・宇多田ヒカルといった鉄壁の布陣でシリーズ化されて話題の作品。様々な人の死が描かれたダークな作品でありながら、視聴者を惹きつけるものは何なのか。ここまでの物語を振り返りながら、作品の魅力と参加クリエーターの手腕について考えていく。
不条理で残酷な死が問いかけるものとは?
『不滅のあなたへ』は、出会った生き物が死ぬことでその肉体を模す能力を持った、“フシ”という不死身の存在が、出会いと別れを重ねながら成長し、己と死に向き合っていく物語。“ノッカー”と呼ばれる敵、フシを生み出した“観察者”の存在、そしてフシとは……。少しずつ謎が解き明かされながら、フシは旅路で様々な人間の人生と死に触れていく。
原作は、『聲の形』のヒットでも知られる大今良時。2016年から『週刊少年マガジン』にて連載中の作品で、現在コミックが15巻まで発売。オリジナリティーあふれる設定と大胆なストーリー展開で話題を集め、『マンガ大賞2018』や『第43回講談社漫画賞』などでも高い評価を得ている。
大今は『聲の形』で、聴覚障害者といじめというセンシティブな問題を通して、そこに生きる人々の人生や思いを生き生きと描いた。思いを伝えることの難しさ、自分との向き合い。その奥深いテーマ性は、『不滅のあなたへ』でも揺らいではいない。フシが出会う人々の人生は、どれもドラマチックに生き生きと描かれ、儚い命のきらめきが視聴者の心を揺さぶっている。
フシに言葉を教えるなど母親のような眼差しで、フシの物語を導いたおしゃまな少女・マーチは、序盤のキーパーソンだ。大人になることを許されず、それでも最後まで不条理と戦った、彼女の健気さとで明るさは物語の救いであり、その生涯はあまりにも短くあっけなかった。仮面をかぶった少年グーグーは、フシにとって兄のような存在として数年を共に過ごした。グーグーの境遇は筆舌に尽くしがたいものだったが、本人はそれを意に介さず笑い飛ばせるだけの強さを持っていた。ようやく最愛のリーンに気持ちが通じた時の感動と、運命の残酷さといったらなかった。うれしいのか悲しいのか、得も言われぬ感情に包まれた人は多いだろう。そうした様々な感情をどう整理し気持ちに決着を付けるかも、このアニメの視聴者に課せられた義務と言えるかもしれない。