『小林さんちのメイドラゴンS』は“京アニらしさ”満載 4年のブランク感じさせないその魅力

 さて、現在の京アニを語る上で避けて通れないのが2019年7月に起きた悲痛な放火事件で、この時に多くの尊い人命が失われたが、『メイドラゴン』第1期の世界観を作りあげた武本康弘監督もまた、その犠牲者のひとりだった。すでに『メイドラゴン』第2期の制作は発表済みだったため、武本監督の死去により作品の行方も心配されたが、京アニ作品の『響け! ユーフォニアム』(2015年)や、前述の『日常』を手がけた石原立也監督が仕事を引き継いだ。とはいえ、オープニングの制作スタッフクレジットではシリーズ監督として武本康弘の名前がしっかりと残されている。もともと『メイドラゴンS』の制作も2019年にはテレビCMが出来上がっていたほどには映像作りが進んでいて、第1話と第2話の絵コンテも描いていたことから、武本監督の第2期への想いやこだわりは、この時点で種が蒔かれていたといっても良いだろう。

 『小林さんちのメイドラゴン』の作風自体はコメディだが、人間の姿に化けて人間社会に適応しようとするドラゴンと、人間との異種族コミュニケーションが根底にあり、時にはドラゴンと人間の断絶が、またある時は種族を超えた愛と友情が描かれている。こういうしっかりしたテーマが土台にあるからこそ、ドラマは笑いにも感動にも大きな振り幅をもって描けるのだ。ドラゴンは人間に比べて遥かに寿命が長く、それ故に人間と共に暮らしていれば悲しい未来が来ることは予想できる。だがトールは、例えいつか別れる日が来ようとも小林さんと一緒にいることを選んだ。普段は登場人物たちのハチャメチャな行動で笑わせられるからこそ、時々トールが見せる切なさや悲しみが観る者の胸に深く刺さるのだ。

 ところで、第2期のタイトルについている「S」とは何だろう? 第1弾PVの中でもセルフツッコミをしているが、なぜ『小林さんちのメイドラゴン2』とシンプルな続編的タイトルにしなかったのか。これは“SuperでSupremeなSecond LifeがStartだぜ!”(イルル談)……という意味の「S」なのだそうだ。

■放送情報
TVアニメ『小林さんちのメイドラゴンS』
ABCテレビ、TOKYO MX、テレビ愛知、BS11、AT-Xにて放送中
ABCテレビ:毎週水曜26:14〜放送
TOKYO MX:毎週水曜24:00〜放送
テレビ愛知:毎週水曜26:35〜放送
BS11:毎週木曜24:00〜放送
AT-X:毎週土曜21:00〜放送
原作:クール教信者(双葉社『月刊アクション』連載中)
監督:石原立也
シリーズ監督:武本康弘
シリーズ構成:山田由香
キャラクターデザイン:門脇未来
総作画監督:丸木宣明
美術監督:落合翔子
3D美術:鵜ノ口穣二
色彩設計:秦あずみ
撮影監督:植田弘貴
3D監督:冨板紀宏
音響監督:鶴岡陽太
音楽:伊藤真澄
音楽制作:ランティス、ハートカンパニー
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:ドラゴン生活向上委員会
声の出演:田村睦心、桑原由気、長縄まりあ、高田憂希、高橋ミナミ、嶺内ともみ、小野大輔、中村悠一、加藤英美里、後藤邑子、石原夏織
OP主題歌:「愛のシュプリーム!」fhana
ED主題歌:「めいど・うぃず・どらごんず ︎」スーパーちょろゴンず [トール(CV.桑原由気)、カンナ(CV.長縄まりあ)、エルマ(CV.高田憂希)、ルコア(CV.高橋ミナミ)、イルル(CV.嶺内ともみ)]
(c)クール教信者・双葉社/ドラゴン生活向上委員会
公式サイト:http://maidragon.jp
公式Twitter:@maidragon_anime

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる