『愛の不時着』『ヴィンチェンツォ』ロスに効く Netflixで配信中のおすすめ韓国ドラマ3選

Netflixのおすすめ韓国ドラマ3選

 『愛の不時着』(2019年)、『梨泰院クラス』(2020年)、そして『ヴィンチェンツォ』(2021年)などのNetflix独占配信ドラマは、韓国ドラマになじみのなかった視聴者を新しい世界へと誘った。その扉を開けてみると、観きれないほどのたくさんのドラマが配信されていて「次に何を観たらいいかわからない」という切実な問題に直面する。ここでは、8月1日に配信開始されたばかりの『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』(2019年)をきっかけに、現在Netflixで配信中のおすすめドラマと関連作品をご紹介。

ドラマ制作の舞台裏と、珠玉のセリフの数々 『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』(2019年)

 英題は『Be Melodramatic』で、恋愛ドラマ(=メロドラマ)の制作過程を通じ、メロの語源である感情を揺さぶられる人々を描く群像劇。脚本・演出は映画『エクストリーム・ジョブ』(2019年)のイ・ビョンホン(あの人気俳優とは同姓同名)が手掛けている。キラキラな邦題とビジュアルで視聴者層を狭めてしまうのが本当にもったいない傑作ドラマだ。ルームシェアをしている学生時代からの親友たち、脚本家を目指すジンジュ(『サニー 永遠の仲間たち』のチョン・ウヒ)、ドキュメンタリー映像作家のウンジョン(『ヴィンチェンツォ』のチョン・ヨビン)、映像製作会社でマーケティングを担当するハンジュ(『都会の男女の恋愛法』のハン・ジウン)。ジンジュが書いた脚本がテレビ局の敏腕PD(プロデューサー兼監督)のボムス(『恋のスケッチ~応答せよ1988~』のアン・ジェホン)の目に留まり、ドラマ化に向けて動き出す。

 ドラマ内で、韓国ドラマ初心者にとって「?」だった間接広告(PPL=プロダクト・プレイスメント)や週2話全16話放送などの業界裏話が明かされ、ドラマがどんなプロセスで作られるのかを覗き見できる。アン・ジェホンが演じるヒットドラマを連発するPD役は、今までのドラマだとシュッとしたイケメン俳優がキャスティングされそうな役。だが素朴で独特な発声のリズムを持つ彼が演じることによって、「彼が作ったドラマを実際に観てみたい」と思わせる不思議な魅力を醸し出す。特に10話の編成会議のシーンや14話の実践的脚本打合せシーンからは、爆笑の上でボムスの愛すべき、信頼に値する人柄が見えてくる。彼が凄腕PDであることの証として、ドラマを観た人はきっと平壌冷麺が食べたくなることだろう。劇中でボムスの感情を崩壊させる曲「Your Shampoo Scent in the Flowers」(花から漂う君のシャンプーの香り)は、『賢い医師生活』でもOSTを手掛けたチャン・ボムジュンが歌いヒット曲となった。

 このドラマに登場する俳優たちは、人々が日常的に表す喜怒哀楽の範疇を越えない自然な演技が特徴だが、ドラマ的なクライマックスには迫真の演技を見せる。『ヴィンチェンツォ』でソン・ジュンギが演じたヴィンチェンツォ・カサノの相棒の弁護士チャヨン役で一躍有名になったチョン・ヨビンが、恋人を失った映像作家を演じている。悲しみによる失感情症や幻影を抱えるウンジョンが感情を解放していくさまは、動の演技のチャヨンとは異なる凄みがある。

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 そして、なんと言っても監督・脚本のイ・ビョンホンによる含蓄のあるセリフの数々。偶数話(韓国での放送時の1話を2話に分けているため)のラストには、印象的なセリフ集が流れる。仕事、恋愛、人生、人間関係に関しこれほどの深く美しいセリフを書いたイ・ビョンホンの才能にうなるばかり。

 『サニー 永遠の仲間たち』、『都会の男女の恋愛法』、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』、『ヴィンチェンツォ』もNetflixで配信中。『エクストリーム・ジョブ』は8月15日より配信予定。

報道とは何か、矜持とは何かを問う 『アルゴン~隠された真実~』(2017年)

 『恋愛体質』の新進脚本家役のチョン・ウヒの主演作。ポン・ジュノ監督の『母なる証明』(2010年)やナ・ホンジン監督の『哭声 コクソン』(2016年)など映画出演が多い演技派女優だが、『アルゴン』では報道番組に配属された契約社員役を演じている。テレビ局内で硬派な報道番組として認知されている「アルゴン」のキャスター(キム・ジュヒョク)と彼のチームは、社内政治や外圧に屈せず“真実”を報道することに命を懸ける。

 報道番組には、ジャーナリスト使命に燃える猪突猛進型のキャスター、出世よりチームの和を大切にするプロデューサー、縁故採用とバカにされ一発逆転を狙う取材ディレクター、契約満期間近で傭兵と呼ばれる記者、夢か職務かで悩む構成作家など、それぞれの思惑を抱えたスタッフが集う。小さな事故の取材から、その裏に連なる大きな陰謀へと絡み合った糸を手繰るような調査報道へとつながっていく。報道のあるべき形を考えさせる硬派なドラマで、真実を報道することの重要性と、トレードオフとなる感情の苦味も描かれる。

 キャスターのキム・ベクジンを演じたキム・ジュヒョクは、ジョニー・トーの香港ノワールの韓国版リメイク『毒戦 BELIEVER』(2018年)や、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』の主人公ドクソンの未来の夫役など、数々の映画やドラマに出演してきた名優。このドラマの放送終了後の2017年に、不慮の事故により急逝している。ベクジンの良き相談相手となる弁護士役で、『賢い医師生活』の外科医ギョウル役のシン・ヒョンビンも出演。

 『毒戦 BELIEVER』、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』、『賢い医師生活』もNetflixで配信中。

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