『愛の不時着』『ヴィンチェンツォ』ロスに効く Netflixで配信中のおすすめ韓国ドラマ3選
1本の邦画が名作ドラマを生んだ奇跡 『マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~』(2018年)
韓国で“国民の妹”と呼ばれる歌姫のIU(アイユー)ことイ・ジウンと、『パラサイト 半地下の家族』(2019年)で世界的に有名になった金持ち家のお父さん、イ・ソンギュンが主演するヒューマンドラマ。仲の良い3兄弟の真ん中・ドンフン(イ・ソンギュン)は建築会社勤務で、誠実で堅実な人柄で部下からの信頼も厚い。だが、ドンフンを陥れようとする社内勢力によって、窮地に立たされてしまう。地味で無口な契約社員ジアン(IU)は、ドンフンを助ける代わりに「1ヶ月間食事をおごってほしい」と交換条件を出す
物語が進むにつれてだんだんと明らかになる、ジアンの表情の暗さの理由と、兄弟や仲間に恵まれたドンフンと妻が抱える、他人には見えない複雑な問題。ソウルの街の片隅に生きる人たちが抱える息苦しさは、ある人にとっては歪みとなり、またある人にとっては共存の理由となる。最終話、挫折を味わっていた新進映画監督の三男ギフン(ソン・セビョク、『母なる証明』では刑事役を演じていた)は、ある邦画のタイトルを口にする。セリフでは、このようなドラマが生まれた背景がほのめかされる。実在の事件をもとにしたその映画は、都会のエアポケットのような現代社会の無情さを描いたものだが、『私のおじさん』の制作陣には異なるメッセージを伝えた。それがIUが演じたジアンのキャラクターの原型となり、ジアンの名前の漢字に込められた意味を知ると涙腺が崩壊する。そして、この曲を聞くたびにジアンやドンフンたちの幸せを願わずにいられない。
このドラマの影の主役は、『ヴィンチェンツォ』でも物真似のジョークになっていたイ・ソンギュンの重低音が響く良い声。ドンフンの勤務先の社長(キム・ヨンミン)は、ジアンに彼の見張り役を命じる。ジアンはその行為を通じてドンフンの真の人柄に触れ、世知辛い人生の中で安らぎを得ていく。このドラマでの役割を知ると、キム・ヨンミンが『愛の不時着』(2019年)で北朝鮮の諜報員の通称“耳野郎”を演じている理由に深い意味があることがわかる。職と妻を失い存在意義を探している長男サンフン役は、『刑務所のルールブック』(2017年)のパク・ホサンが演じている。また、『梨泰院クラス』(2020年)でスア役を演じたクォン・ナラが、傷を抱えた女優役で出演している。お酒に飲まれがちな彼女が、その後出演した『梨泰院クラス』で居酒屋経営側にまわっているのも皮肉なキャスティングだ。
『パラサイト 半地下の家族』、『愛の不時着』、『刑務所のルールブック』、『梨泰院クラス』もNetflixで配信中。
■配信情報
『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』
『アルゴン~隠された真実~』
『マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~』
Netflixにて配信中
写真はJTBC、tvN公式サイトより