北山宏光の目を見張るクズ男っぷりが話題 『ただ離婚してないだけ』の“やばさ”に迫る
昨今、北山がドラマで演じてきた役柄は、熱量が高く、どこか憎めないキャラクターが多かった印象だ。今年1月にSexy Zone佐藤勝利とW主演を果たしたシンドラ『でっけぇ風呂場で待ってます』(日本テレビ)では、シチュエーション・コメディ形式かつお笑い芸人による脚本であることも相まって、下町の老舗銭湯『鵬(おおとり)の湯』を引き継いた第5代目番頭・松見芯をテンション高く演じた。人情派で熱い男っぷりは、彼の持つパーソナルな魅力ともリンクしていた印象だ。
また、2019年の主演ドラマ『ミリオンジョー』(テレビ東京系)では、担当していた人気漫画家の死をきっかけに“なりすまし連載”を継続するという大勝負に出る漫画編集者・呉井総市を熱演。一見、チャラい若者のように見せながら、漫画愛ゆえに常軌を逸した行動に出るところも、どこかKis-My-Ft2としてジャニーズアイドルという枠組みにとらわれずに、がむしゃらに仕事と向き合う北山自身のアツさがにじみ出ているように感じた。
そこからの、本作である。撮影現場の北山についても、雪映役を演じる中村ゆりがインタビュー(参考:『ただ離婚してないだけ』の難役も「演じていて楽しい」 中村ゆりが語る女優の“ときめき”)で「監督にも『何でも言ってください!』とおっしゃっていました。監督の演出にしっかり応えたいという姿勢も、役者さんとして素晴らしいなと思います」と語っているように、やはり私たちのイメージどおりの彼がそこにいるようだ。
しかし、本番になると、死んだ魚のような目で血の海を眺める。不器用ながらもキラキラとした北山の持ち味とも言える目の光は一切ない。そこからツーっと伝う涙は実に儚く、未来への希望も、自分自身への期待も見つからないと、語りかけてくるようだ。その振れ幅の大きさに、面を食らうファンが続出するのも無理はない。
作中で描かれた、正隆がまだ血の繋がらない父親からの愛情を信じていたころの様子は、私たちが知る北山の姿にとても近いように感じた。一つひとつの仕事を熱心に取り組み、周囲に対しても気遣いを忘れない。ハツラツとしていて、自信をにじませる中に謙虚さもあって、まさに将来有望な気持ちのいい若者という印象だった。
期待に応えたい、周りからも、そして自分自身にも。その繊細な心持ちもまた、北山の内面に潜むもう一つの顔なのかもしれない。誰もが簡単に人生の落とし穴にハマる。頑張りたい気持ちがぷつりと途切れて、甘い誘惑に溺れ、そして取り返しのつかない地獄に足を踏み入れてしまう。
デビューが遠く歯がゆい思いをした下積み時代から、デビュー後も試行錯誤が続いたKis-My-Ft2。どんな逆境にも、まっすぐに頑張り続けて北山が正隆を演じるからこそ、誰でもタイミングが重なればこんな風に闇堕ちしてしまうのかもしれないという説得力が増す。この人なら大丈夫、なんてことはないのだとゾクゾクとさせられるのも、このドラマの「やばい」ところではないだろうか。
一度転がり始めた玉は、加速しながら落ちていく。北山演じる正隆が、どこまで落ちていくのか。そのとき、彼がどんな表情を見せてくれるのか。その先の見えない演技に、じっとりと汗ばむ夏になりそうだ。
■放送情報
ドラマホリック!『ただ離婚してないだけ』
テレビ東京ほかにて、毎週水曜深夜0:00~放送
動画配信サービス「Paravi」「ひかりTV」にて配信中
出演:北山宏光(Kis-My-Ft2)、中村ゆり、萩原みのり、深水元基、北川拓実(少年忍者/ジャニーズJr.)、大原優乃、山口祥行 、西川可奈子、武田航平、団時朗、甲本雅裕、杉本哲太
原作:本田優貴『ただ離婚してないだけ』(白泉社)
監督:安里麻里、角田恭弥、松本拓
脚本:田中眞一、清水匡、安里麻里
主題歌:Kis-My-Ft2「Fear」(avex trax)
チーフプロデューサー:山鹿達也(テレビ東京)
プロデューサー:松本拓(テレビ東京)、矢崎ゆうこ(ジェイ・ストーム)、中野剛、加藤毅
制作:テレビ東京/ジェイ・ストーム/東映ビデオ
製作著作 :「ただ離婚してないだけ」製作委員会
(c)「ただ離婚してないだけ」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/tadarikon/
公式Twitter:@tx_tadarikon