『うらみちお兄さん』は大人向け教育番組? “みんな違ってみんないい”の癒やし
梅雨明けとともに続々と放送スタートとなった2021年夏アニメ。外出したくなる季節だがコロナ禍でおうち時間を過ごす人が増え、それに伴ってテレビや動画配信サービスでドラマや映画よりも短い時間で手軽に観ることができるアニメのラインナップも注目されている。
Filmarksが発表した「2021年夏アニメ 期待度ランキング」によると、1位に選ばれたのは根強い人気を誇る“異世界転生モノ”の名作『転生したらスライムだった件 第2期 第2部』。続いて、Netflixで配信されているテレビゲーム『バイオハザード』シリーズ初の連続CGドラマ『バイオハザード:インフィニット ダークネス』が2位に選ばれた。
そして3位に選ばれたのが、子供向け教育番組に携わる大人たちの“裏の顔”を描いたブラックコメディ『うらみちお兄さん』だ。原作は一迅社とpixivが運営するウェブマンガサービス「comic POOL」で連載され、電子版を含むコミック累計発行部数が150万部を突破した久世岳による同名漫画。ファン待望のアニメ化で放送前から期待が寄せられていたが、最も注目を浴びている理由は豪華声優陣の起用である。
作中に登場する教育番組『ママンとトゥギャザー』に出演する体操のお兄さん・表田裏道(おもたうらみち)役は、『進撃の巨人』リヴァイや『おそ松さん』チョロ松など一癖ある人気キャラクターの声優を務めてきた神谷浩史。定評のある振り切った演技やラジオ番組などで発揮しているトーク力で、身体能力が高く爽やかで子供たちからも人気があるのに、実は根暗でネガティブな“うらみちお兄さん”の裏と表の顔を表現している。
また、元ミュージカル俳優の歌のお兄さん・蛇賀池照(だがいけてる)役を宮野真守、アイドル、ナイトクラブのジャズ歌手など職を転々として歌のお姉さんにたどり着いた多田野詩乃(ただのうたの)役を水樹奈々と、アーティストとしても活躍する2人が担当。OPではそれぞれが歌のお兄さん・お姉さんとして、教育番組らしいキャラクターソング「ABC体操」でさすがの歌唱力を披露している。
打って変わって宮野が歌うEDテーマ「Dream on」は少しビターな仕上がり。うらみちお兄さんと同じく番組内では素敵な大人だが、常にボーッとおにぎりのことを考え、低レベルな下ネタに過敏に反応する“イケてるお兄さん”、付き合っている売れない芸人の彼に結婚を迫るも相手にしてもらえず荒んでいる“うたのお姉さん”のギャップをOPとEDの両方で表現しているようで面白い。
本作の中心となるのはこの3人だが、他にもうらみちお兄さんの後輩である兎原と熊谷を、共演経験も多く、“磁石コンビ”(それぞれのイニシャルがSとNのため)と呼ばれるほどプライベートでも交流がある杉田智和と中村悠一が演じており、さらにベテラン声優の三木眞一郎が『ママンとトゥギャザー』のプロデューサー・風呂出役、『鬼滅の刃』主人公・炭治郎役で世間にその名を知らしめた花江夏樹をEDの枝泥役に起用するなど、とにかく豪華。シリアスな作品はもちろん、セリフ回しと間の取り方が完璧なキャストが揃い、背水の陣で惜しみなくギャグが連発される本作に挑んでいる。そのため、原作と同じ内容でも声優たちの独特なテンションで繰り広げられるやり取りに笑いがこみ上げてくるのだ。