『うらみちお兄さん』は大人向け教育番組? “みんな違ってみんないい”の癒やし

『うらみちお兄さん』は大人向け教育番組?

 特に個人的にも面白く、放送後にも話題になっていたのが、宮野が表現したイケてるお兄さんの“笑い”。イケてるお兄さんは「チン」が付く言葉にことさら弱く、「チンアナゴ」「チンニング」「賃上げ」といったワードが出てくると腹筋が崩壊する。第1話では初めて「チンダル現象」を知った時の衝撃をうらみちお兄さんに語り、思い出し笑いをするシーンがあったのだが、その時の宮野の演技があまりにも自然でつられて笑ってしまう人が続出した。

 ただ、楽しんでいる人がいる一方で「ネガティブな言葉や愚痴を30分聞かされるのがしんどい」という意見も。もちろん本作はコメディではあるが、うらみちお兄さんをはじめ社会に揉まれた大人たちのリアルな本音や闇の部分を描いているので、アニメの世界で現実的な話を聞きたくないという人もいるだろう。しかし、少なからず日々辛いことに絶え、疲れ切っている人にとって『うらみちお兄さん』はある意味“救い”にもなる。

「人生なんて人それぞれなんだから、毎晩特に面白くもない深夜ドラマ観ながら安いカップ酒あおってる独り身のお兄さんを『不幸せ』と思い込まない方がいいよ。勝手な思想は時として人を殺すんだよ☆」

 これは番組に出演している子供からの、「お兄さんは31歳なのに、なんで結婚もしてなくて子供もいないんですか?」という純粋な質問に対するうらみちお兄さんの回答。本作では“かっこいい”とは言い難い大人たちがたくさん登場するが、グチグチいいながらも仕事をこなし、休日は各々好きなことをして過ごしている。お兄さんの言葉通り、みんな幸せとは言い切れなくともそれなりに楽しく生きているのだ。子供の頃になりたかった自分には程遠いけれど、ネガティブだったり、人生に迷ったり、大人げなく泣いたり、小学生のような下ネタに爆笑したり……そんな大人がいてもいいとゆるく肯定してくれる。「みんな違ってみんないい」と無意識のうちに気づかされる“大人向けの教育番組”みたいな側面が『うらみちお兄さん』にはあるのかもしれない。

■放送情報
『うらみちお兄さん』
テレビ東京にて、毎週月曜深夜1:30~放送
BS11にて、毎週火曜深夜1:00~放送
WOWOWにて、毎週水曜深夜0:00~放送 ※全話無料放送
北海道テレビにて、毎週木曜深夜1:50~放送
アニマックスにて、毎週土曜22:30~放送
各サービスにて配信中

声の出演:神谷浩史、杉田智和、中村悠一、宮野真守、水樹奈々、木村良平、鈴村健一、小野大輔、三木眞⼀郎、堀内賢雄、花江夏樹、高橋ミナミ(「高」はハシゴダカが正式表記)、佐藤利奈、中井和哉、津田健次郎、日笠陽子、定岡小百合、大塚芳忠
原作・監修:久世岳
監督:長山延好
シリーズ構成:待田堂子
キャラクターデザイン:髙橋瑞紀、柴田裕介
音響監督:小泉紀介
音楽:羽岡佳
アニメーション制作:スタジオブラン
(c)久世岳・一迅社/「うらみちお兄さん」製作委員会
公式サイト:http://uramichi-anime.com/

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