藤木直人は"育て役"がハマり役? 主人公たちを導いてきたメンターキャラを振り返る
現在放送中の『ボクの殺意が恋をした』(読売テレビ・日本テレビ系)。自分の親代わりとなる存在・男虎丈一郎(藤木直人)を殺された主人公・男虎柊(中川大志)が、彼を殺した犯人と思われる鳴宮美月(新木優子)に復讐を企てる物語だ。本作で丈一郎を演じている藤木直人は、初回で何者かに殺され退場するものの、その後も毎回、中川大志演じる柊がピンチの時に彼に教わったことを思い返す回想シーンで登場。ある意味、死後に彼の育て役としての本領を発揮する演出になって、ドラマ内の存在感は増す一方だ。
藤木直人は、これまで何かと育ててきた。『僕の殺意が恋をした』の前に出演していた地上波ドラマ『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)でも、過去のトラウマから日常を怯えながら過ごす青年・真人(林遣都)の理解者として、気さくに彼の社会復帰を助ける高田を演じ、親代わりといえばNHK連続テレビ小説『なつぞら』では戦争で親を亡くしたなつ(広瀬すず)を引き取って育てる、柴田剛男を演じた。年齢とキャリアを重ねていくうえでそういった役柄を演じる機会が増えることは俳優としては一般的なことだが、誰がどう見ても「ザ・イケメン」な甘いマスクの藤木は、実はずっと前からこういった主人公を導いていく立場のキャラクターを演じてきたのである。
特に女性主人公のメンター役としての印象が強く、そのきっかけは間違いなく『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系)だ。主演に綾瀬はるかを迎え2007年に始まった本シリーズは人気を博し、続編の放送、そして映画化もされた。藤木は本作で綾瀬演じる“干物女”の雨宮蛍の上司であり、ひょんなことから彼女と同棲する“部長”こと高野誠一を演じている。“干物女”という言葉を世間に広めたのも、このドラマだったはず。会社ではきっちりオフィスカジュアルでキレイめにしていて振る舞いも大人っぽくしていた蛍は、家に帰ればジャージ姿で散らかし放題。そんな彼女の性根を、キレイ好きで几帳面、家事が得意(プラス顔面最強)という現代の独身女性の喉から手が出るような部長が叩き直していく。元々はそれで恋に落ちた彼女を応援していたものの、気がつけば蛍に惹かれてしまい、結局は「面倒見のいいヨシヨシ系歳上彼氏」というドラマ史に残る最強イケメンキャラのポジションを確立させた。
その後も、藤木は再び女性のメンター役をドラマ『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)で担っている。中谷美紀演じる完璧なのに恋愛下手のアラフォー美人ヒロインに、恋愛指南をする和食屋の料理人という役柄。終始毒舌で、プライドの高い主人公をけちょんけちょんに言いまかしてしまうが、それでも彼女の頑張りを見守り誰よりも応援している。そんなキャラクターを演じているわけだが、『ホタルノヒカリ』に始まるこういった“ちょっとポンコツなヒロイン”を支えていく役柄に彼が定着していったのは、さらに遡ること『ナースのお仕事』(フジテレビ系)の高杉健太郎役に始まったことなのかもしれない。
『ナースのお仕事』にはシーズン3から登場し、主人公の朝倉いずみの勤める同じ病院の研修医として彼女と恋仲になり、後に結婚する。彼は初っ端こそ朝倉の目の前で栄養失調のため倒れ、初出勤が救急車という頼りない男で、その時は彼を「なんとかしてあげたい」と朝倉の母性をくすぐった。しかし彼女と交際し始めると、ダラシない朝倉に代わってゴミ出しや料理などの家事を率先した。この時からすでに、ズボラ女子のお世話を見るイケメンというイメージを形成していのかもしれない。『ラスト・シンデレラ』(フジテレビ系)でも、いろんなことが無頓着になった“おやじ女子”の主人公が務めるヘアサロンの店長として、彼女にぐちぐち嫌味を言ったり、指南をしたりした。