『孤独のグルメ』は飲食業界へのエールそのもの “五郎限界説”を跳ね返す松重豊のパワー

『孤独のグルメ』は飲食業界へのエール

 『孤独のグルメ Season9』では、間違いなくコロナ禍の今が描かれている。五郎はマスク姿で歩き、店に入るときは丁寧に手の消毒を行う。お楽しみの「ふらっとQusumi」もノンアルコールになった。

 『孤独のグルメ Season9』は、コロナ禍で苦境にあえぐ飲食業界へのエールそのものだ。いつもひとりで黙食、アルコールも飲まない五郎の外食スタイルは、コロナ禍での外食にうってつけ。第1話の冒頭で、五郎がかつて訪れた飲食店の無事を喜ぶシーンがあるが、これも多くの飲食店にコロナ禍を乗り越えてほしいという願いが込められているように見える(実際の店主も撮影現場に現れた松重との再会を大いに喜んでいた)。

 もちろん、五郎は今回もたくさん食べる。第1話では、ひれかつ御膳をバクバク食べて、魚介クリームコロッケと巨大な海老フライをたいらげていた。店の前には長い坂があるため、「みんな、あの苦しい坂を、上り鮭のごとく這い上がって食べに来たのか」という五郎のモノローグがあるが、「苦しい坂」が現在の状況のメタファーになっていると考えるのは穿ち過ぎだろうか。

 いや、そんなしちめんどうくさいことを考えるより、明日は感染対策を万全にして、うまいとんかつを食べにいこう。そんなことを考えさせるパワーが五郎の食べっぷりと『孤独のグルメ』にはある。五郎はドラマの中でひれかつ御膳を選んでいたが、後日、どうしてもロースが食べたくなった松重は一人で店を訪れて舌鼓を打ったという。“五郎限界説”なんて、とんでもない失礼だった。

 東京都と沖縄県では再び緊急事態宣言が発令され(8月22日まで)、これから暑くて苦しい夏がやってきそうだが、五郎には食って食って食いまくってもらい、飲食業界と我々視聴者を元気にしてもらいたい。我々も感染対策を万全にしてルールを遵守した上で、外食を楽しむようにしたいものである。

■放送情報
ドラマ24『孤独のグルメ Season9』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12~放送
※テレビ大阪のみ翌週月曜深夜0:00~放送
主演:松重豊
原作:『孤独のグルメ』作・久住昌之/画・谷口ジロー(週刊SPA!)
脚本:田口佳宏、児玉頼子
音楽:久住昌之、ザ・スクリーントーンズ
演出:井川尊史、北畑龍一、北尾賢人、佐々木豪
チーフプロデューサー:阿部真士
プロデューサー:小松幸敏(テレビ東京)、吉見健士(共同テレビ)、菊池武博(共同テレビ)
制作協力:共同テレビジョン
製作著作:テレビ東京
(c)テレビ東京
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume9/
公式Twitter:https://twitter.com/tx_kodokugurume

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