韓国アクションから台湾ヒューマンドラマまで 7月は見逃せない“アジア映画”が目白押し!

7月はアジア映画が目白押し!

 例年なら大作系サマームービーが市場を席巻する7月。しかしすっかり世界は変わってしまい、延期を重ねて公開された『ゴジラvsコング』や上映館数の少ない『ブラック・ウィドウ』が奮闘を見せているものの、やはり夏の映画興業としては寂しさを感じてしまう。

 だからといって、公開作品をチェックしないまま済ませてしまうのはもったいない。特にアジア映画の劇場公開がこれまで以上に相次いでいる状況は特筆すべき点だろう。たとえば6月公開作品からざっと挙げるだけでも、人気ラブコメドラマに新規シーンを追加した『2gether THE MOVIE』(タイ)、女性心理をスリリングに描いたホン・サンス監督の『逃げた女』(韓国)、何をするにもワンテンポ早い女性とワンテンポ遅い男性の物語がファンタジックに交錯する『1秒先の彼女』(台湾)、『少年の君』で注目を集めるデレク・ツァン監督の単独デビュー作『ソウルメイト/七月と安生』(中国・香港)などが封切られた。

 そんな流れを汲みつつ、7月公開の注目すべきアジア映画をご紹介したい。

『アジアの天使』(日本)

『アジアの天使』(c)2021 The Asian Angel Film Partners

 『アジアの天使』(7月2日より公開中)は、『舟を編む』などで知られる石井裕也が脚本・監督を務めた、日本製作にしてオール韓国ロケの意欲作。妻を亡くして息子とともに韓国へ渡る青木剛を池松壮亮、剛の兄・透をオダギリジョーが演じている。また韓国からは『オクジャ okja』のチェ・ヒソ、『ビューティー・インサイド』のキム・ミンジェ、ゾンビ時代劇『キングダム』のキム・イェウンが3兄妹役で参加。両親の墓参りのために列車に乗っていた3兄妹と全財産を失った青木兄弟が運命的に出会い、思いがけず旅を共にする姿が描かれる。

『デュー あの時の君とボク』(タイ)

『デュー あの時の君とボク』(c)2019 CJ MAJOR ENTERTAINMENT CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

 『2gether THE MOVIE』と同じくタイ発のラブロマンス映画『デュー あの時の君とボク』(7月2日より公開中)は、同性愛に対する偏見が色濃い1996年のタイの町が舞台。厳格な家庭育ちのポップと転校生デューの出会いは友情を越えた感情を生み出すも、彼らの関係は家族を含めて周囲に理解されない。やがて2人はそれぞれの道を歩み、ポップは母校の教師となって……。物語とともに映し出される美しいロケーションや、情緒的なシーンの数々に注目していただきたい。

『唐人街探偵 東京MISSION』(中国)

『唐人街探偵 東京MISSION』 (c)WANDA MEDIA CO.,LTD. AS ONE PICTURES(BEIJING)CO.,LTD.CHINA FILM CO.,LTD “DETECTIVE CHINATOWN3”

 『唐人街探偵 東京MISSION』(7月9日より公開中)は、日本をはじめとした国際色豊かなキャスティングが見どころの作品。東南アジアのマフィア会長が殺害された事件を巡って世界の名探偵たちが東京に集結し、日本の警視正や指名手配犯まで絡んで事件は混迷を極めていく。中国からはドニー・イェンとの共演でおなじみのワン・バオチャン、タイからは世界的アクションスターとなったトニー・ジャーが参戦。そして日本人キャストは妻夫木聡、長澤まさみ、浅野忠信、染谷将太、三浦友和、鈴木保奈美ら主演クラスの俳優がずらりと名を並べている。日本の夏に相応しい、まさに“お祭り騒ぎ”の1本!

『サムジンカンパニー1995』(韓国)

『サムジンカンパニー1995』(c)2020 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

 『グエムル -漢江の怪物-』でモンスターに連れ去られる少女を好演したコ・アソン主演の『サムジンカンパニー1995』(7月9日より公開中)。すっかり大人の女性へと成長を遂げたアソンが演じるのは、「サムジン電子」入社8年目のイ・ジャヨンだ。ジャヨンをはじめ生産管理3部のヒラ社員はステップアップを夢見るも、その矢先に自社工場から有害物質が排出されている事実を知ってしまう。会社の不正を暴くために奮闘するジャヨンたちの物語は、ジュリア・ロバーツがアカデミー賞主演女優賞を獲得した『エリン・ブロコビッチ』にも通じるのではないか。

『走れロム』(ベトナム)

『走れロム』(c)2019 HK FILM All Rights Reserved.

 各映画祭で高い評価を受けている『走れロム』(7月9日より公開中)は、サイゴンの裏町を舞台に違法な“闇くじ”に挑む少年ロムの姿をスリリングに描いた作品。監督のチャン・タン・フイが本作で鮮烈な長編デビューを飾ったことはもちろん、ベトナム当局の検閲を通さずに釜山国際映画祭へ出品したことが問題視され、再編集を経て商業公開に至ったという点もベトナム映画の本質を知る上で重要な作品ではないだろうか。

『トラック』(韓国)

『トラック』(c)Sidas FNH ALL rights reserved.

 映画ファンから支持を集める「カリテ・ファンタスティック! シネマコレクション2021(カリコレ2021)」で上映される『トラック』。子どもの手術費用を稼ぐため死体処理という闇の仕事に手を染めるトラック運転手の前に、連続殺人鬼を追う刑事が現れたことで運転手は究極の選択を迫られることに。2008年の製作からかなり時間を置いての日本上陸となるが、絶妙な作品チョイスを誇るカリコレならではのプログラムと言える。主演を務めるユ・ヘジンの魅力を知る上でもぴったりだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる