クセのある役柄で脚光を浴びた永山瑛太と岡田将生 『まめ夫』『リコカツ 』で再評価
そして、一方の永山瑛太の活躍についても言及していきたい。永山が長期間に渡り芸名を「瑛太」として活躍していたことは周知のとおり。2003年の『WATER BOYS』(フジテレビ系)でシンクロ同好会のブレーンを担う頭脳明晰な高校生役で注目を浴びる。また人気作品『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)のヴァイオリニスト・峰龍太郎役ではメインキャラクターの一員としてお茶の間に広く愛されることに。どちらかというと文科系男子のイメージが強く、顔立ちもあっさりした塩顔の永山が今回『リコカツ』(TBS系)で演じたのは、航空自衛隊・航空救難団のエースにして水口咲(北川景子)との結婚と離婚を繰り返すことになる緒原紘一だ。緒原は「女は黙って男に従うもの」という化石のような価値観を持つ男。加えて結婚初日の朝から突然切り口上で妻の咲に家訓を押し売りするなど、時代錯誤の甚だしさには度肝を抜かれる。
そんな緒原役で永山は、今までの自然体でラフな芝居から180度イメージを刷新し、オーバーアクションでマッチョイズムに溢れた芝居に挑む。本作のために鍛え上げられた肉体、不自然なまでに誇張されたセリフの抑揚、大げさな表情や動作、ひとつひとつが完ぺきなまでに作り込まれ、あまりに個性的すぎる姿はシリアスを通り越して笑いを誘う。だが緒原の真っ直ぐな誠実さは、ただ笑われて終わりではなくしっかりと視聴者の心へと響いただろう。
今回のキャスティングに際し『リコカツ』でプロデューサーをする植田博樹は、北川と瑛太に出演してもらうために2人のスケジュールが合うのを丸2年待ったと語っていることからも、緒原紘一は永山なしには成立しなかったことがうかがえる(参考:北川景子&永山瑛太“美女と野獣”な夫婦に 新ドラマ『リコカツ』Pが語る起用理由 | ORICON NEWS)。
両者に共通するのは厄介なキャラクターのままで終わらせずに、そこにきっちりと愛される要素をとりいれてきたところだ。鼻持ちならない役のまま終わることなく、人としてしっかりと成長をとげた姿までを描き、さらにはそれぞれの役者が吹き込んだどこか憎めない“愛しさ”も加担して役はさらに魅力を増す。こうして、それぞれのキャラクターは視聴者に愛される存在へと導かれたのだろう。
今までにない個性あふれる役柄で4月期ドラマを席巻した岡田将生と永山瑛太は、これからの役者道において重要な一歩を踏み出したことは間違いない。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■公開情報
『Arc アーク』
全国公開中
出演:芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫
原作:ケン・リュウ『円弧 アーク』(ハヤカワ文庫刊 『もののあはれ-ケン・リュウ短篇傑作集2』より)
脚本:石川慶、澤井香織
監督・編集:石川慶
音楽:世武裕子
配給:ワーナー・ブラザース映画
製作プロダクション:バンダイナムコアーツ
製作:映画『Arc』製作員会
2021年/日本/127分/スコープサイズ/5.1ch
(c)2021 映画『Arc』製作委員会
公式サイト:http://arc-movie.jp/
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