公開から間もない作品が続々登場! 海外の事例とともに邦画スピード配信の傾向を探る

邦画も配信が主流になる?

 ストリーミングサービスの普及が進むにつれ、近年、映画の劇場公開から配信までの期間が短くなっている。なかでも特に注目したいのは、邦画でも劇場公開後3カ月から6カ月ほどでNetflixで配信開始となる作品が増えていることだ。これまではU-NEXTが最新作の配信が最も早いストリーミングサービスとして知られていたが、その多くはポイント利用(有料)での配信がメインだった。しかしNetflixは毎月の定額利用料さえ払えば、追加料金なしで最新作を観ることができる。これは観客側にとっては画期的なことだし、うれしいことでもある。海外ではコロナ禍をきっかけに、劇場公開と同時にネット配信が開始になる作品が非常に増えてきている。はたして邦画も、今後そういったかたちが主流になっていくのだろうか。これまでに劇場公開からそれほど間を置かず、Netflixで配信開始となった邦画作品を振り返りながら、考えていこう。

海外ではNetflixオリジナル作品が先陣を切る

 まずは劇場公開とストリーミング配信の差がほぼなくなってきているアメリカの状況から見てみよう。コロナ禍の影響で、ワーナー・ブラザースの『ワンダーウーマン 1984』(2020年)が劇場公開と同時に追加料金なしでストリーミング開始となったが、これはワーナーの子会社HBOのストリーミングサービスHBO Maxで1カ月限定でのことだった。しかし、このような超大作が短期間とはいえ公開と同時にストリーミング配信されたことは大きな話題となり、今後の映画鑑賞のかたちに影響を与えるだろうと言われている。またワーナーだけでなくディズニー・スタジオも、公開と同時にストリーミング配信を開始するというスタイルに移行しつつある。同スタジオはやはりコロナ禍の影響で劇場公開がたびたび延期になっていた実写版『ムーラン』を、2020年9月に自社のストリーミングサービスDisney+(ディズニープラス)でプレミアアクセスとして配信することを決定した。これは、月額利用料に加えて29.99ドル(日本では税抜2,980円)で作品を視聴することができるというものだ。その後もアニメーション映画『ラーヤと龍の王国』(2021年)や人気ヴィランのオリジンを描く『クルエラ』(2021年)など、ディズニーは最新作を劇場公開と同時にプレミアアクセスで配信するようになった。

『クルエラ』

 この公開形式は今後もつづき、マーベル・スタジオの『ブラック・ウィドウ』やドウェイン・ジョンソンが主演を務める『ジャングル・クルーズ』も、7月からやはり劇場公開と同時にプレミアアクセスで配信予定だ。日本以上に多くのストリーミングサービスが浸透しているアメリカでも、劇場公開と同時にストリーミングが開始される作品は、その多くが追加料金を払う必要がある。

 一方、米Netflixは、コロナ禍以前からオリジナル作品を劇場公開の約2週間後に配信するというかたちをとってきた。2018年のアルフォンソ・キュアロン監督作『ROMA/ローマ』は、11月21日に劇場公開された後、12月14日から配信開始となった。その後もマーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』(2019年)や、デヴィッド・フィンチャー監督の『Mank/マンク』(2020年)など、名だたる監督たちの最新作が劇場公開から間を置かず配信されてきたわけだが、これはオスカー対策のためだ。オスカーのノミネート条件には、“特定の地域で一定期間以上、劇場公開された作品でなければならない”というものがあり、それをクリアするための劇場公開とも言える。コロナ禍の影響でこの条件は見直されたが、本来劇場で公開される予定だった作品、あるいは現在劇場で公開中の作品がストリーミング配信されることが多くなった今、追加料金なしで自宅で観られるとなれば、なおさら視聴者はNetflixを選ぶのではないだろうか。

邦画は小・中規模作品を中心に配信までのスピードが加速

 では邦画の配信状況はどうなっているのだろう。日本のNetflixオリジナル作品は、基本的に配信のみで劇場公開はされない。そこで注目したいのは、一般の作品がNetflixで配信されるまでのスピードである。2019年9月に公開された『宮本から君へ』は、1年足らずの2020年5月からNetflixで配信が開始された。公開から約6カ月での配信だ。『37セカンズ』は2020年2月に劇場公開され、たった2カ月後の4月に配信開始となった。その他にも、2020年7月に公開された長澤まさみ主演の『MOTHER マザー』が同年11月に、2020年11月に公開された『タイトル、拒絶』が翌年2021年5月に、そして2021年1月に公開された『ヤクザと家族 The Family』が同年5月に、と約半年ほどでNetflixで配信される作品が急速に増えている。そして2021年4月2日に公開された綾野剛主演の『ホムンクルス』は、20日後の4月22日から配信開始と、米Netflixのオリジナル作品とほぼ同じスピード感で配信された。

『宮本から君へ』(c)2019「宮本から君へ」製作委員会

 ここに挙げたとおり、劇場公開から配信までの期間が短いのは小・中規模の作品がメインになっている。面白いのは、この5つのうちの3つ『宮本から君へ』、『MOTHER マザー』、『ヤクザと家族 The Family』がスターサンズによる配給であるということだ。同社の代表取締役を務める河村光庸はNetflixについて、第33回東京国際映画祭が主催したトークイベント「アジア交流ラウンジ」第4回にて「私どもも『MOTHER マザー』を配信してもらうということで一緒に仕事をしてわかったのが、Netflixさんは製作者に寄り添っている。いろいろな配信会社がありますが、これだけ巨大な企業になりながらもものづくりに対するきちっとした姿勢を崩さない」と述べており、大きな信頼を寄せているようだ。Netflix側にとっても、配信作品を充実させること、コンテンツの多様性を担保することは重要な戦略の1つだ。レコメンド機能を強みとしているNetflixは、小・中規模作品でもそれを好みそうなユーザーに提供することができる。ここにスターサンズが配給した作品とNetflix配信の相性の良さがあると言っていいだろう。



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