大政絢が有名飲食チェーン店で味わう“真剣一本勝負” 『ひとりで飲めるもん!』で心満たす
6月4日放送・配信スタートの新ドラマ『ひとりで飲めるもん!』(WOWOW)は、働く女性の“ちょい飲み”グルメストーリーと何やら既に香ばしい設定が気になる。原作は、『凪のお暇』(秋田書店)、『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン)など、ストレスの多い現代社会で懸命に生きる人にとってのホッと一息つける休息場所を描いてきた人気漫画家コナリミサトの同名コミック(芳文社)だ。
主人公の紅河メイ(大政絢)は、コスメ会社の広報部で異例のスピード出世を遂げリーダーに抜擢された28歳バリキャリ、容姿端麗、超速のマルチタスク処理能力を持ち、社内でも“カリスマ”と崇められる存在だ。仕事中は気分にムラもなく、何事もそつなくこなし、ピンチにも動じず社内外への神対応の数々が炸裂する。ポーカーフェイスで、上司や後輩、ビジネスパートナーなど全方位からの信頼も厚く、自分の手柄は部下のおかげだとし、部長には忖度しない、正に“理想の上司”そのものだ。
そんな完璧で隙がないかに見える彼女が好むのは、ミシュラン星獲得店でも高級シャンパンでもホテルのラウンジのアフターヌーンティーメニューでもない。外食チェーン店でのひとり飲みである。リーズナブルに飲めるチェーン店飯が大好きで、この時間だけは彼女の中で張り詰めていた糸がプツリと切れ、めいっぱい羽を伸ばせるようだ。
彼女を彼女たらしめているのは、この仕事帰りの至福の一杯であるのだ。会社の人たちとも群れずに、仕事が終わればサクッと切り上げ、その後は“自分ひとりの、自分だけの楽しみ”めがけてまっしぐら、貪欲に“自分の食べたいもの”、“美味しいもの”を迷いなく味わう“真剣一本勝負”だ。
新商品コスメの広告撮影で起用したモデルはわがままだし、部長(村杉蝉之介)は自分の好みだけでキャスティングする職権乱用を発動するし、なかなかライバルの老舗化粧品会社・美聖堂の知名度は超えられないし……仕事をしていれば、自分の力及ばぬところで起こる様々な予期せぬトラブルの火消しばかりだ。それでもメイはただただ仕事を愛し、一生懸命で、自身のやるべきことに誠実に集中しているだけで、“結果は自ずと後から付いてきた”タイプなのだろう。そんな彼女にとっては、実績や周囲からの称賛・評価が、自身の疲労などの全てをチャラにしてしまえる程の威力は持たない。だから、肩肘張らなくて良いチェーン店で、自分のためだけに“一杯”を楽しめるこの時間、空間があることこそ、彼女が明日もまた職場で“紅河メイ”でいられる“ガソリン”なのではないか。自分で自分のご機嫌をとれるようになる、つまり自分で自分自身を労ってあげ喜ばせてあげられる手段、方法を知っている人は強い。