2人の女性が共鳴 “情報”が重要なソリッド・シチュエーション・スリラー『オキシジェン』

『オキシジェン』の物語が真に迫ってくる理由

 『CUBE』(1997年)や『ソウ』シリーズなど、主人公が密閉された状況に閉じ込められることで発生する恐怖や、脱出の奮闘を描いた映画のことを、一部ではソリッド・シチュエーション・スリラー、もしくはワンシチュエーション・スリラーなどと呼ぶ。そのようなジャンルのなかでも、おそろしく脱出困難な状況を描いた個性的な一作が、Netflixで配信されている、アメリカ、フランス合作映画『オキシジェン』だ。

 主人公である1人の女性が閉じ込められることになるのは、医療ポッドと見られる、1人が寝そべられるだけのあまりにも狭い空間。極低温によるコールドスリープ状態から女性が目覚めると、彼女は自分が記憶を失っていることに気づく。この主人公を演じているのは、フランスの俳優で、『イングロリアス・バスターズ』(2009年)出演を機にアメリカ映画に進出後、充実したキャリアを重ね、近年は映画監督としても活躍するメラニー・ロラン。

 彼女は、そもそもなぜポッドの中に閉じ込められているのか分からず、自分の名前すら思い出せない。目の前のドアはパスコードがなければ開かず、さらには、ポッド内の酸素(オキシジェン)の量に限界があるため、これが尽きる前に状況を打開しなければ、もはや死を待つのみである。

 そんな極限状況の中で助けになるのは、ポッドに接続されている「M.I.L.O.(ミロ)」と呼ばれる人工知能だ。彼女は外部のネットワークに繋がっているM.I.L.O.と会話し、質問や命令を投げかけることで、断片的に状況を理解していく。ちなみにM.I.L.O.の抑揚のない声は、こちらもフランス出身で幅広く活躍する、名優マチュー・アマルリックが演じている。

 そんなM.I.L.O.を経由して、彼女はついに警察に電話を繋げることに成功する。しかし困ったことに、そもそも自分がいる、この場所は一体どこなのだろうか。ポッド内の彼女にはそれを知る術がなく、対応する警察官も場所の探知は難しいと話す。小さな希望が見えては、消えていく……。この繰り返しに焦りながら、それでも彼女は少しずつ手がかりを集め、自分の置かれた状況の謎へと近づいていくのだ。

 ソリッド・シチュエーション・スリラーは、最低一つのセットを用意すれば映画が撮れるということから、基本的に小規模で撮るジャンルという印象が強い。いまではハリウッド有数のヒットメイカーとなったジェームズ・ワン監督も、20代のときに比較的低予算で挑んだ映画『ソウ』(2004年)でのヒットが、その後の成功への足がかりとなっている。だが本作は、そういった作品とは一線を画し、微細に作り込まれたセットや衣装、俳優陣の豪華さなど、非常にリッチな雰囲気が漂う。本作のアレクサンドル・アジャ監督も、低予算の企画ではなかったことをメディアの取材で明らかにしている。

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