視聴者をゴシックミステリーへ誘う『シャドーハウス』 アニメ化で面白さが際立った好例に

 横一列に並んだ男女混合の子どもたちが、声を揃えて全員で唱える。「生き人形はシャドー家に仕えることが幸せである」と。子どもたちは、茶色い液体が注がれたグラスを手に取って飲み干す。そんなミステリアスな導入部で始まったテレビアニメが、現在放送中の『シャドーハウス』(2021年)だ。

TVアニメ『シャドーハウス』公式サイトより

 漫画家・ソウマトウが『週刊ヤングジャンプ』(集英社・刊)に連載中の同名漫画が原作で、コミックスは現在7巻まで発売中。断崖に佇む大きな洋館シャドーハウスには、貴族のような暮らしを送り、“お影様(おかげさま)”と呼ばれる顔のない一族のシャドー家と、その顔役として召使いのようにお影様に仕える生き人形たちが暮らしている。放送を重ねるたびに作品世界を取り巻く謎が深まったり、あるいは謎の片鱗が明かされたりと、翌週の放送が気になる構成がアニメファンの注目を集めているのだ。

 シャドー家の人々は手足はもちろん顔も真っ黒で、表情はおろか瞳も唇も見えない、まさに顔のない一族。身体中から煤が出るので、手で触れた物や身に着けた服が黒く汚れ、常に部屋を掃除しなければいけない。一方でシャドー家の一人ひとりに仕える生き人形は、それぞれお影様の身の回りの世話係をしながら、顔役を務めるために日々自分を磨くよう励んでいる。本作の主人公にあたる生き人形のエミリコは少々ドジだが、シャドー家のケイトの役に立とうと明るく懸命に働いており、感情の起伏が少ないような話し方をするケイトも、何事にも前向きで明るいポジティブなエミリコを気に入り、彼女に目をかけてゆく。

 原作はエミリコが花瓶を倒したり棚の人形を落したりドジな行為の数々さや、ポケットの中からパンを取り出すときの擬音を「パーン」と表現するなど、作者の絵柄のタッチも手伝って愉快なニュアンスで描かれている所も多いのだが、アニメでは原作のミステリアスな空気感がより濃厚に押し出されている。漫画にはないアニメーション特有の要素である声と音楽、そして背景の色合いが、これほどまでに効果的に謎めいた世界観を表わせるものなのかと思うほどに。

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