視聴者をゴシックミステリーへ誘う『シャドーハウス』 アニメ化で面白さが際立った好例に

 まさしくアニメ化されたことで、原作の面白さがグッと引き立った例だと言える。劇伴担当の末廣健一郎が作曲したインストゥルメンタルのオープニングテーマ「a hollow shadow」は、弦のメロディがゴシック調ミステリの雰囲気をまとい『シャドーハウス』の不思議な世界に一気に惹きこまれるし、ReoNaが歌うエンディングテーマ「ないない」は、作品の内容に寄り添った深い歌詞がマイナーコードに乗って刻まれ、次週への期待感を煽ってくれる。アニメにおける音楽が、いかに重要かを思い知らされるのが本作だ。

 生き人形がシャドー家のことをあれこれ詮索してはいけないのはなぜか? 屋敷の中に生き人形が立ち入ってはいけない場所があるのはなぜか? シャドー家の人々と生き人形の関係とは何か? そもそも外部からの訪問者が来ないシャドー家とはいったい何なのか? 生き人形が口に出すのもはばかられる“偉大なるおじいさま”とは誰なのか? ……など放送が進むにつれて深まる謎の数々。キャスティングに関しても、本作に登場する大半のシャドーと、それに仕える生き人形を同一声優が兼ね役として演じ分けているのに対して、主人公ペアのエミリコとケイトはそれぞれ別々の声優が役を受け持っているのは何か理由があるのだろうか。

 視聴者がエミリコと同じ視点で、物語の中に隠された謎を追いかけ、次第に解き明かしてゆく『シャドーハウス』は果たしてどんな着地点へ到達するのだろうか。連載は現在も進行形のため、テレビアニメは独自の終わらせ方をすることになるだろうが、アニメ公式サイトで「ゴシックミステリー」と表現されている、不穏で不思議な物語の結末を興味深く見つめたい。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
『シャドーハウス』
TOKYO MX、MBS、BS11、群馬テレビほかにて放送中
原作:ソウマトウ(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載) 
監督:大橋一輝 
シリーズ構成:大野敏哉
キャラクターデザイン:日下部智津子 
美術設定:前田みつき
美術監督:坂上裕文、後藤千尋
音楽:末廣健一郎
3D監督:宮地克明
音響監督:小泉紀介 
声の出演:鬼頭明里、篠原 侑、酒井広大、佐倉綾音、川島零士、下地紫野ほか
アニメーション制作:CloverWorks 
(c)ソウマトウ/集英社・シャドーハウス製作委員会
公式サイト:https://shadowshouse-anime.com/
公式Twitter:@shadowshouse_yj

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