モダンなアート寄り怪獣映画? 滅茶苦茶を楽しむ『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

怪獣も人間も、“滅茶苦茶”を楽しむ

 『ゴジラvsコング』が延期に延期を重ね、世紀の大決闘の決着を日本中が待ち侘びている。そんな中、前作にあたる『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が地上波放送される。緊急事態宣言も延長となり、ステイホームが進む中、溜まった鬱憤を我々の代わりに拳に乗せてぶちまけ合ってくれる怪獣の大乱闘が楽しめて、スカッとすること間違いなしな映画だ。

 サンフランシスコが舞台だった2014年公開の『GODZILLA ゴジラ』の続編にあたる本作は、前作に引き続き怪獣を調査する秘密機関「モナーク」が公にされたことでその研究基地が世界中に広がっている。ということで、中国は雲南省、南極、メキシコ、アメリカはワシントンD.C.にボストンと様々なロケーションが登場し、ちょっとした世界旅行が楽しめるのも楽しい。しかも、迫力満点の怪獣とメチャクチャになる都市の大破壊というおまけ付き。

 前作の『GODZILLA ゴジラ』では、目玉のゴジラが全然出てこない。ギャレス・エドワーズ監督があまりにも観客を焦らしたせいで、不満の声も多くあがっていたように思える。劇場アンケートをやらせれば、間違いなく自由記入欄に「もっとゴジラを見せろ!」と書かれていただろう。しかし、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を任されたマイケル・ドハティ監督はそのアンケート結果を集計し、それに対してアンサーするかのように本作を作った。「これが観たかったんだろ!」とでも言うかのように、今度はこれでもかというほどゴジラも出てくるし、モンスター・ゼロことキングギドラや、モスラ、ラドンが大活躍する。さすが、『クランプス 魔物の儀式』の監督なだけある。

 映画の見どころはもちろん、その怪獣たちのめちゃくちゃな戦いっぷりだ。ダイナミックな動きはもちろん、モスラの羽化の瞬間、大雨の中のモンスターゼロとゴジラの戦い、青い光を空に放つゴジラの破壊光線……全てが、視覚的にとにかく美しい。全体的に色味にこだわりを見せる本作は、従来の怪獣映画における埃っぽさや土っぽい色合いの雰囲気とは離れた、モダンなアート寄り怪獣映画とも言える。そして音楽も相まってシーン全てが神々しく、まさに怪獣たちの総称“タイタン”という表現にぴったりの演出が見どころの一つだ。もはや人間は為す術もない。

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