日本のユーザーにも大きな影響? AmazonのMGM買収などハリウッドで相次ぐスタジオ統合の行方

ハリウッドで相次ぐスタジオ統合

 このところ、ハリウッドのスタジオが絡む企業買収劇が続いている。アメリカ現地時間5月26日に公式発表となったアマゾンによるMGMの買収、そしてAT&Tは傘下のワーナーメディアを切り離し、ディスカバリーと合併し新会社を設立する計画も明るみに出た。

 前者のアマゾンのMGM買収金額は負債込みの84億5000万ドル(約9200億円)で、2017年にオーガニック系スーパーマーケットWhole Foods(ホールフーズ)を買収した137億ドルに次ぐ大型ディール。アマゾン未開域だった生鮮食品分野を充足し、オーガニックや高級食材を日常的に消費する富裕層顧客をプライム会員に取り込む策として買収が行われた。

 2020年のパンデミックで自主隔離中にアマゾンの宅配サービスは大きく成長し、買い物に行くと店内にはデリバリー要員の方が多い状況が続いていた。アマゾンのジェフ・ベゾスCEO(2021年7月にCEOを退任し、会長に就任することを)は、MGM買収について、現地時間5月26日に行われた株主総会で「MGMが持つ膨大なライブラリーのIP(知的財産)を21世紀に向けて再構築・再開発することができる」としている。MGMが保持するIPには、『ロボコップ』、『ピンクパンサー』、『羊たちの沈黙』、『ロッキー』、そしてもちろんジェームズ・ボンドの『007』シリーズがある。だが『007』シリーズの権利の大部分は製作会社のイーオン・プロダクションズが保持していて、イーオンのバーバラ・ブロッコリ&マイケル・G・ウィルソンは『007』シリーズのマーケティング、キャスティング、配給戦略など全ての承認権とクリエイティブ・コントロールを持つ。そのため、今回の買収に際しても10月8日公開予定の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の劇場公開如何に注目が集まっていた。なお、MGMはアメリカ国内での配給権を持ち、海外配給はユニバーサル映画が手がける。ブロッコリ兄妹は「私たちは、世界中の映画館の観客のために、ジェームズ・ボンド映画を作り続けることを約束します」と声明を出している。

 一方のAT&Tによる組織改革は5月17日に第一報が流れ、ジョン・スタンキーCEOは24日の投資家向けコンフェレンスで「AT&Tの事業はほぼ米国内向けだが、多くの加入者を増やすためにはグローバル展開が必要不可欠。そのため、コンテンツ配信の最高の資産の1つであるディスカバリーに1000億ドル規模の投資をすることで、グローバルで成功するためのよりよいポジションを得ることができる。ディスカバリーとワーナーメディアの組み合わせは非常に魅力的であり、2つの事業からもたらされるシナジー効果によって、優れたコンテンツライブラリーを継承し、国際的な競争力を増す」と述べている。AT&Tは、事業からワーナーメディアを切り離し、ディスカバリーと合併した新会社を設立。2社のメディアとコンテンツ資産であるCNN、TBS、TNT、HGTV、フードネットワーク、ディスカバリーチャンネルなどの有線放送チャンネル、映画スタジオのワーナー・ブラザース、ストリーミングサービスのHBO Maxと、今年1月に開始されたばかりのディスカバリープラスを統合する。米国でのHBO Maxの月額使用料は14.99ドル、6月からは9.99ドルの広告付きプランが提供される予定。ディスカバリープラスの広告付きプランは月額4.99ドル、広告なしプランは6.99ドル。

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