『恋はDeepに』切ない石原さとみ×綾野剛の未来 渡邊圭祐演じる榮太郎はまさかのギャップ

『恋ぷに』切ない石原さとみ×綾野剛の未来

 そんな海音にとって週刊誌の記者を撒いて、遊園地に連れ出してくれて、自分の身の潔白を晴らそうと出演したテレビの生中継中の絶体絶命のピンチに駆けつけてくれる倫太郎の存在は“命綱”のようなものだろう。「俺は何ができるんだろう。海音とずっと一緒にいるために、何ができるんだろう、どうしたら良いんだろうって。俺は君を離したくない」ーーこの地上で鴨居教授以外に自分の正体(人間ではないこと)を知っているたった一人の男に“これから”の未来の話をされた後に、人魚の末路を知ってしまうなんて、あまりに残酷だ。

 「地上にとどまった人魚は人間を不幸にしてしまう」――自分のせいで鴨居研究室の存続が危ぶまれ、「海音ちゃんは元気でいてくれればそれでいいの」なんて言ってくれる鴨居教授はじめ研究室のみんなに迷惑をかけてしまっている上、大切な倫太郎まで振り回し悲しい想いをさせてしまう。倫太郎は「帰ろう」と言ってテレビ局から連れ出してくれたけれど、そもそも倫太郎と海音の“帰る”場所は違うのだ。それなのに、泣きながら入った海で、海さえも彼女を迎えてはくれなかった。

 海の中に大切な人が進み行く姿は倫太郎のトラウマの原体験を思い起こさせるものでもあり、ここでもふたりの悲しき運命が交差するのだ。倫太郎はもうこれ以上、海に愛すべき人を奪われてしまう訳にはいかないのだ。母親を亡くした事故の際には、足がすくんで動けなかったと話していたが、海音の元には一目散に駆け寄る姿が彼の強い決意を感じさせる。これ以上“さがしもの”は増やしたくはないと、大切なものからは目を離さず、しっかりと自分の手で掴んでいられるように。

 その裏で、蓮田トラストの株が香港の会社によって買い占められていることが発覚し、さらに大量の株を売却していたのは三男・榮太郎(渡邊圭祐)だったことも明かされる。買収元会社の代表は蓮田トラストの経営陣の刷新と合わせて榮太郎を取締役に推薦する(この展開は元々手を組んでいた鴨居研究室の椎木<水澤紳吾>にも知らされていなかったようだ)。これが蓮田トラストにとって、また三兄弟にとって良い方向に舵を切るきっかけとなるのだろうか。

 海音が博物館で目にした「星ヶ浜伝説〜人魚との別れ〜」ではサブタイトル通り、人魚と人は結ばれない(ちなみにアンデルセン童話での『人魚姫』もまた水の泡となって消えてしまう運命だ)。そして、きっと倫太郎はそんな伝説を知ったとしても、お構いなしに自分の手で彼女を必死に守ろうとするだろう。彼女が大切に思う海洋環境の保護と自分の夢である「海中展望タワー」の建設を両立させることを決して諦めないように。

 とうとう残り2話。オーロラかのようなピンク色の鱗がヒラヒラとさざ波に揺らめく情景は皮肉なほど美しく切ない。信じ難い、信じたくはない気持ちを紛れもない事実だと憎らしいくらいに刻み込んでいく。海音の存在が、皆が海音と過ごした日々が“過去形”で語られることのない未来を願ってやまない。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
4月期水曜ドラマ『恋はDeepに』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:石原さとみ、綾野剛、今田美桜、大谷亮平、渡邊圭祐、橋本じゅん、藤森慎吾(オリエンタルラジオ)
脚本:徳尾浩司
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:枝見洋子、畠山直人、鈴木香織(AX-ON)、山口雅俊(ヒント)
演出:鈴木勇馬、岩本仁志、伊藤彰記
主題歌:back number「怪盗」(ユニバーサル シグマ)
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/deep/
公式Twitter:@deep_ntv
公式Instagram:@deep_ntv

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