竹野内豊×黒木華『イチケイのカラス』新章が幕開け ドラマの本質を突く重要なテーマ

竹野内豊×黒木華『イチケイのカラス』新章が幕開け ドラマの本質を突く重要なテーマ

 入間(竹野内豊)が裁判官に転身するきっかけとなった12年前の殺人事件の真相が解き明かされ、ひとつのクライマックスとも呼べる大きな展開を迎えた前回。5月24日に放送された『イチケイのカラス』(フジテレビ系)第8話は、それを経た新たな章の幕開けといったところだろうか。イチケイの書記官である川添(中村梅雀)のナレーションから幕を開け、二組の夫婦の人生を左右させる裁判のゆくえを描くとともに、裁判官と書記官という“夫婦”にもフォーカスを当てていく。

 合議制で扱うことになったのは、坂間(黒木華)が裁判長を務める窃盗事件の被告人でもある潮川(真凜)が保釈中に起こした傷害事件。潮川が万引きで捕まった際の目撃者で、彼女の小学生時代の恩師だった山寺(朝加真由美)が頭を石で殴打され、記憶障害などの後遺症を伴う怪我を負ったというものだ。併合審理として進められることになり証言台に立った潮川は、山寺が万引きしているのを止めに入り、襲われてしまい抵抗したことを主張。しかし市議会議員である山寺の夫は、妻から元教え子に襲われたと連絡を受けたと説明。供述の食い違いを受け、入間は職権を発動し捜査を行うことにするのだ。

 第5話で極めて異例のかたちで描写された「併合審理」が、基本的なかたちで描かれたことはさておき、今回のエピソードの大きなキーワードとなっているのは「クレプトマニア」。いわゆる「窃盗症」である。精神医学の手引きである「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)」での説明を簡潔にまとめれば、必要かそうでないかなどの利益に関係なく、物を盗むという衝動に抵抗できない状態がつづくことであり、窃盗によってスリルや緊張感、満足感が得られることを求めてしまう。劇中の説明にある通り、“窃盗のための窃盗”というわけだ。

 万引きの常習犯に多くみられ、また男性よりも女性の方が多いというデータもあるようで、その理由はほとんど今回のエピソードの2人の妻の境遇を見れば一目瞭然であろう。潮川は夫の単身赴任によって義母の介護から育児まですべてを背負い込んでしまい、山岸は教職を退いたことから来る喪失感と夫からのプレッシャーを常に受けていたことが容易に見て取れる。劇中では、こうした人々へのもっとも適切な向き合い方がふたつ、異なる方向から提示される。ひとつは入間が語りかける「勇気を持って『助けて』と言ってみたらどうでしょうか」という言葉。これはクレプトマニアに限らずとも、あらゆる生きづらさを感じている人々に共通して言えることかもしれない。

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