『大豆田とわ子と三人の元夫』嫌な予感は想像以上の結果 餃子パーティーの裏に残酷な現実

『まめ夫』嫌な予感は想像以上の結果に

 一方、6人が解散した後、八作のスマホにメッセージが入る。

 八作はコンビニで、なぜか100本入りストローとホッチキス、そして靴下を買って病院へと向かう。誰から電話をもらい何のために病院に行くのかがわからないため、観ていて不安になる。八作が廊下を歩いていると「午前1時17分、死亡確認」「直接死因は心筋梗塞」と医師が話している場面が挟み込まれる。ここで一瞬、とわ子のことか? と思ったが、八作が廊下を曲がるととわ子が座っていて、ひとまず安心する。しかし、ストローとホッチキスが、とわ子の親友の渡来かごめ(市川実日子)のパーカーの紐を通すものだったことがわかり、亡くなったのがかごめだったことが明らかになる。

 その後、かごめの葬式の準備を手伝うとわ子の姿が描かれる。

 つまり今回は、元夫の恋愛パートとかごめとの別れを描いたパートの二部構成だったのだが、その裏側で行われていたとわ子と門谷の交渉場面が一切描かれなかったため「何か酷いことをされているのではないか?」と嫌な予感を抱きながら、最後まで観てしまった。

 『カルテット』(TBS系)以降の坂元裕二作品を観ていると、展開されている物語の背後で、何か不穏なものが蠢いていると感じることが増えている。今回の『まめ夫』の描写はより洗練されており、この第6話では、主人公のとわ子が一時的に画面から姿を消すことで、ひょっとしたら彼女に何か起きているのではないかと想像させることに成功していて、優雅で楽しいラブコメディの向こう側に残酷な現実が蠢いていることを今まで以上に実感させられた。

 この第6話で第1章が幕を閉じる。時間は1年後に飛ぶが、今後の展開は謎に包まれており、どういう話なのかいまだに掴むことができない。しかし、だからこそ『まめ夫』の世界に深くのめり込んでしまうのだろう。「描かないことで視聴者の想像を掻き立てる」坂元裕二の作劇手法がどこまで進化するのか、今後も楽しみである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『大豆田とわ子と三人の元夫』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン、弓削智久、平埜生成、穂志もえか、楽駆、豊嶋花、石橋静河、石橋菜津美、瀧内公美、近藤芳正、岩松了ほか
脚本:坂元裕二
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
音楽:坂東祐大
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mameo/
公式Twitter:@omamedatowako

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