『きみセカ』などのサバイバルホラー 生死を分ける“法則”と、キャラ人気への密接な関係

『きみセカ』などのサバイバルホラー 生死を分ける“法則”と、キャラ人気への密接な関係

※本稿には、『君と世界が終わる日に』(日本テレビ×Hulu)のストーリーに関わるネタバレが含まれます。

 ゾンビ、スプラッターといったサバイバルホラー作品では、“誰が死に、誰が生き残るのか”というジャンル特有の楽しみ方がある。『あなたの番です』(日本テレビ系)でも、毎週一人ずつ死んでいく展開に次なる犠牲者の考察が行われ、社会現象を巻き起こしたほどだ。先日、シーズン2最終回を迎えシーズン3の製作が発表された日本テレビ×Huluの共同製作ドラマ『君と世界が終わる日に』もまた、比較的穏やかであまり死人の出なかった地上波放送のシーズン1に比べ、Hulu独占配信となったシーズン2ではこれでもかというくらい、人が死んだ。その中でも、特に第4話で医師のユン・ジアン(玄理)を救うために生きる屍の群れに飛び込んだ桑田(浅香航大)、衝撃的な奇襲によって致命傷を受けた甲本(マキタスポーツ)の死はシリーズの中でも印象深く、また意味深いもので、SNS上でも大きな反響があったことからキャラクターの人気ぶりが窺える。ゾンビドラマといえばお馴染みの『ウォーキング・デッド』(特にシーズン9から10)へのオマージュの多い本シリーズだが、メインキャラクターの殺し方の豪快さも含め、多くの視聴者を驚かせたことだろう。

『君と世界が終わる日に』(c)NTV/HJホールディングス

 驚く、というのには訳がある。それは観る我々があらかた“誰が生き残るか”、つまり“どんなキャラクターが生き残るか”という一種のセオリーに則って鑑賞しているからだ。例えば、主人公は腹に銃弾を食らっても生き残るだろうとか、主人公のライバル(最終的に協力関係になるタイプ)は手首を『死霊のはらわた』のアッシュみたいにチェーンソーで切り落としても出血死さえしないとか、逆に主人公じゃないキャラで守るべきものができた奴は自己犠牲を払って死ぬとか。言ってしまえば、そういう“メタい”見方をしている。そして、セオリーを軸にその意外性を楽しんでいるわけだ。

 元来、こういったサバイバルホラーにおける“生存/死亡キャラ”の概念はスラッシャーフィルムから強く意識されるようになったと思う。特に、先に挙げた『死霊のはらわた』や『13日の金曜日』、『悪魔のいけにえ』に通じる多種多様の登場人物が集まるタイプのもの。金髪の尻軽、ブルネットの生娘、筋肉バカ、臆病なオタク、葉っぱでストーンドなやつ、そういった典型的なキャラクターたちが一堂に介した状況で、軽率な行動をとってしまうというレッテルを貼られた金髪とマッチョが先に殺される。そして最後に残るのは決まって信心深い生娘(通称:ファイナルガール)というのがお決まりとなり、いつしかホラー/スリラージャンルの“掟”のようなものとなった。

 これは、性格ではなく役職(立場)にも置き換えられ、ゾンビ系をはじめとする多くのサバイバルホラーに応用できる。例えば近年のゾンビ映画のレールを敷いたザック・スナイダー監督作『ドーン・オブ・ザ・デッド』では、看護師の主人公、警察官、犯罪者、普通のサラリーマン、ゴリゴリのビジネスマンなど、様々な職業のキャラクターが登場する。ここでも、典型的なレッテルが発動し、そのイメージで“生き伸びそうなキャラ/死ぬキャラ”が予想できる。ただし、“掟”に従ってばかりではつまらない。主人公は真っ先に死ぬはずの金髪美女だが看護師であるため“価値の高いキャラ”だから生き残り、もう一人のセクシー系金髪もなかなか最後まで根気強く生き残ったと思いきや、ゾンビとか関係なく手元の狂った仲間によってチェーンソーの刃を受けて死ぬなど、典型の中にもツイストが加わってくる。また、本来ならモラルという見えないバリアによって守られている妊婦と子供も、見逃してもらえると思いきや逆に一番酷い死に方をするなど、典型の中の意外性が肝となっていった。そのセオリーの中で「ああ、思った通り!」「そうきたか、予想外!」という一種の賭けを楽しむのも、サバイバル系作品の醍醐味だ。

『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』DVD

 そしてその次は、そのセオリーのメタさ自体を楽しむメタOFメタな作品が登場し始める。先に述べた「ブルネット生娘しか勝たん」理論や、他のキャラクターのステレオタイプについて取り上げた『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』が、 もっとも良い例だ。スプラッターホラーで一躍有名になったB級女優の娘が、ひょんなことをきっかけにその場に居合わせた友達と映画の世界に入り込んでしまう。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ラスト・アクション・ヒーロー』と似た設定だが、入り込んだ先は典型的な80年代のスプラッター映画。元の世界に戻る必須条件の「殺人鬼を倒す」をクリアするために、主人公が仲間とともに奮闘する本作では、“死ぬキャラ”として消費されてきた人物たちが必死にそのセオリーを覆そうとする。同じように、『死霊のはらわた』をベースに作られた『キャビン』も、お決まりの登場人物を用意して“誰が生き残るか”という賭けを映画の中で描いたメタ作品だ。

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