毎田暖乃の再登場が『おちょやん』にもたらしたもの 千代と春子を演じ分けた繊細な演技力
朝ドラにおいてヒロインの人生の原点である少女時代に子役が果たす役柄は重要で、愛らしさだけでなく、その演技力の高さが話題をさらうことも多い。『おちょやん』(NHK総合)では、千代(杉咲花)が継母の栗子(宮澤エマ)と再会したことにより、千代の少女時代を演じた毎田暖乃が栗子の孫・春子役として再登場。千代の子供の頃のけなげさ、たくましさを思い出させつつ、千代にとっては継母の孫でその存在すら知らなかった春子が絶望の淵にあった千代に新しい希望を感じさせるという繊細な演技を見せた。
ヒロインの子供時代を演じて再登場したといえば、『なつぞら』で主人公なつ(広瀬すず)の少女時代を演じた粟野咲莉がなつの妹の千遥(清原果耶)の娘・千夏を演じたことが話題になった。テレビアニメ『大草原の少女ソラ』が大好きな千夏がなつの前に現れ、幼い頃に生き別れになったままだった千遥と約30年ぶりに再会できるきっかけを作った。なつの子供の頃の面影そのままに、姉妹の絆を取り戻す希望の象徴でもある重要な役を担い、可憐な印象を残している。
千夏の登場は第144回の放送で、物語もクライマックス。北海道を舞台にしたアニメを製作する側のなつと、その物語に惹かれる千夏が出会うことでこれまでのなつの境遇を振り返るとともに、次の世代に繋げたいなつの思いを再確認するという効果があった。一方、今回の『おちょやん』の第21週で登場する毎田暖乃演じる春子の役どころには、千代の強さと優しさの原点を振り返るだけでなく、千代の過去の苦しみやつらさを癒す力もあったように思われる。
一平(成田凌)と離縁した千代が道頓堀を去り、帰る場所がなく雨に濡れていた千代を家に招いたのは継母の栗子だった。千代にとって姪にあたる春子の面倒を見てやってほしいと栗子は言い、春子の存在が千代の心に少しずつ変化をもたらした。
栗子といえば、テルヲ(トータス松本)が新しいお母ちゃんだと貧しい家に連れてきたものの、家事もせず、ヨシヲ(荒田陽向/倉悠貴)の分に千代が持ってきたおはぎまで勝手に食べて謝りもせず、いつも三味線を弾いていた姿が忘れられない。勝気で口が達者な千代を奉公に出して、自分と生まれてくる子供もとテルヲと3人で暮らしたいと言っていたのも栗子だ。