“技術”も求められる? 中井貴一、貫地谷しほり、風間俊介ら俳優によるナレーションの魅力

中井貴一ら俳優ナレーションの魅力

 顔が映ることはないが、声一つで存在感を醸し出すナレーターは、テレビ番組における縁の下の力持ち的な存在だ。基本的には声優が務めることが多く、最近のバラエティー番組やCMでは、『鬼滅の刃』で注目を集めた花江夏樹、下野紘、鬼頭明里らの名前を多く目にする。一方、NHKの番組やドキュメンタリー番組では俳優がナレーターを務めることも多い。『サラメシ』(NHK)の中井貴一、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)の貫地谷しほり、連続ドキュメンタリー番組『RIDE ON TIME』(フジテレビ系)の風間俊介など。俳優が務めるナレーションには、どんな魅力があるのだろうか?

番組に合った声で没入感を与える

 『情熱大陸』(MBS・TBS系)などのナレーターを務める窪田等を筆頭に、その声の存在感が番組のカラーとなることもある。『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)や『炎の体育会TV』(TBS系)などでおなじみの立木文彦、『開運!なんでも鑑定団』(TXN系)や『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)などで有名な銀河万丈など。東山紀之が15年以上に渡ってナレーションを務めている『バース・デイ』(TBS系)は、東山の声が番組の顔になった。そんなナレーターの存在感によって、魅力がさらに引き上げられている番組は多くある。

『サラメシ シーズン11』(写真提供=NHK)

 中井貴一がナレーターを務めるNHK『サラメシ』は、サラリーマンやOLなど、働く人の昼食にスポットを当てた番組。職場の食堂やオフィス街の行列店など、昼時となればどこの食事どころも活気に満ちあふれている。それだけに中井のナレーションも、実に明るく軽快だ。近年、中井は、映画『記憶にございません!』の総理大臣役や、ドラマ『共演NG』(テレビ東京系)での崖っぷち俳優役を、ユーモアたっぷりに演じ上げて話題になった。そうしたコメディーへの出演経験と、『サラメシ』のナレーターでのハイテンションぶりは、相関関係があるだろう。それにしても、中井のナレーションを聞いていると、番組に出てくるご飯がどれもおいしそうに見えるから不思議だ。あの声が活力を与え、気づけば意欲がわいてきておなかがすいてくるといった具合だ。『サラメシ』が2011年の放送開始以来、10年続く人気番組となった立役者は、中井貴一のナレーションだと言える。

『プロフェッショナル 仕事の流儀』(写真提供=NHK)

 また、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』で橋本さとしとともにナレーターを務める貫地谷しほりは、女優として数多くのドラマや映画に出演する一方で声の仕事も多く、TOKYO FM『SCHOOL OF LOCK! GIRLS LOCKS!』でパーソナリティーを務めたほか、『屋根裏のポムネンカ』や『RAINBOW ー二舎六房の七人ー』(日本テレビ系)などに声優として出演した経験を持つ。『プロフェッショナル』のほかにも、『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)や、『新 美の巨人たち』(テレビ東京系)など数多くのドキュメンタリー系番組のナレーターにももともと定評がある。

 ドキュメンタリー系番組のナレーションは、感情移入してその役になり替わる役者の演技とは違って、客観的に事実を伝える冷静さと視聴者を引きつける人間味や温かみが必要とされる。『プロフェッショナル』では、仕事現場の張り詰めた空気感を橋本が重みのある声で伝え、貫地谷は仕事人の生い立ちなどをどこか温かみも感じられる口調で伝えてくれる。視聴者にとっては人ごとである仕事人の物語ではあるが、それをまるで自分のことのように感じさせ、その物語に没入することができるのは、貫地谷のナレーションによるところが大きいだろう。

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