舞台『INTERVIEW』は何度でも観たい Teamごとに印象が変わる俳優たちの熱演

舞台『INTERVIEW』は何度でも観たい

 現在、品川プリンスホテル クラブeXで上演中のミュージカル 『INTERVIEW~お願い、誰か僕を助けて~』は、2016年に韓国でトライアルで2週間の初演が公開されて以来、京都、ソウル、東京、そしてニューヨークのオンブロードウェイで公演を重ねてきた。

 中でも、多重人格のシンクレアを演じる俳優には、これまでの公演で、SUPERNOVAのユナクやソンジェ、イ・ジフン、チャンソン(2PM)・N(VIXX)などがキャスティングされてきた。今回は、初の日本語での公演でそのシンクレアを糸川耀士郎と小野塚勇人が演じる。

 Team RED(松本利夫/糸川耀士郎/伊波杏樹)と、Team BLUE(丘山晴己/小野塚勇人/山口乃々華)のダブルキャストにより回替わりで上演されているこの舞台について両者のそれぞれの魅力についてレビューしたい。

 かなり複雑なこの舞台のはじまりについて整理して書いておこう。2001年2月17日、ベストセラー小説『人形の死』を書いた作家・ユジン・キム(松本/丘山)の元に、アシスタントになりたいという青年・シンクレア・ゴードン(糸川/小野塚)が訪ねてくる。ユジンは作家志望だという彼に、自殺した連続殺人犯が書いた遺書を渡し、それを元に物語を作ってはどうかと提案する。シンクレアは穏やかな青年であったが、自分の中の“怪物”を目覚めさせたように、息子に愛情を注がなかった母親が、その息子に殺されるという物語を創造し始める。やがて、シンクレアはユジンの書いた『人形の家』の物語の通りに女性たちが殺害されていること、そして『人形の死』のモデルはジョアン・シニア(伊波/山口)ではないかと指摘する。彼は、シンクレアという人間になりすましたジョアンの弟、マット・シニアだった。

 ここから、マット・シニアの中の何人もの人物が現れる。ジミーはタバコを吸い、荒々しい口調を使うし、ウッディは子供で姉のジョアンの言葉にも怯えて従ってばかりだ。アンはジョアンの友人だというが、ジョアンのことを嫌って逃げてばかりで、ノーネームは冷静沈着で何が起こっているのかをすべて知っている人物であった。

 これらの異なる人物を次々と演じていき、しかもそれらの人物が同時に現れ、混乱をきわめるシーンがあるのだから、この役を演じることは、俳優としては挑戦であり、恐怖でもあるだろう。小野塚は初日を前にした記者会見で「ゾーンに入って演じたい」と冗談めかして語り、その場を沸かせていたが、実際に観てみると、ゾーンに入らないと演じられないくらいの大変な役だと実感した。

 REDバージョンとBLUEバージョンが共に出演した記者会見で、REDバージョンは熱いぶつかりあいが特徴で、BLUEバージョンは大人の雰囲気であると紹介されていたが、実際に観てみると、台詞も歌も同じなのに、ここまで印象が違うのかと驚かされる。

 ひとつには、マット・シニアを演じる俳優の中に、その後、現れる別の人間の中の誰の性質にぴったりとくる核があるのかということも関係があるように思える。例えば、糸川の場合は、最初になりすましていた穏やかなシンクレアや、優しいウッディにしっくりくる部分が大きく、だからこそ、激しいジミーを演じているときには、強いストレスやつらさがこうした人格が生まれたのだなと思わされた。

 反対に小野塚の場合は、荒々しいジミーや、冷静沈着でなんでも把握しているノーネームにベースがあるように思えるし、子供のウッディやアンのような優しい人格が、彼を守っていたのだと思わせる。

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