迫田孝也、三谷幸喜作品で培った実力を発揮 『天国と地獄』東朔也役で体現した世の不条理

迫田孝也、三谷幸喜作品で培った実力を発揮 『天国と地獄』東朔也役で体現した世の不条理

「……15分だ、お前が15分先に生まれてくれば、お前の人生は俺のものだったんだよ……!!」

 歩道橋で弟に積年の感情をぶつける兄。それは死に向かって歩くしかない男の“終わりの始まり”だった。

 とうとう最終回を迎えるTBS日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』。第9話では張り巡らされた「謎」の多くが解き明かされ、中身が入れ替わっていた望月彩子(綾瀬はるか)と日高陽斗(高橋一生)が元の状態に戻る。

 綾瀬と高橋の入れ替わり演技の妙に加え、抜群のコメディセンスを見せつけた八巻役の溝端淳平、昭和感漂う刑事・河原を演じる北村一輝、バランサーとして作品を支える陸役の柄本佑など、個性的でありながら、完璧なチームプレイを成立させる本作キャスト陣の中で、特に中盤から終盤にかけて、ひときわ輝きを放った俳優がいる。湯浅=東朔也役の迫田孝也だ。

 当初は陸の師匠として登場した湯浅和男。その後、病院の記録から湯浅が日高の二卵性双生児の兄・東朔也だったと判明。迫田は作品の根幹部分を担うこのキャラクターを見事に演じ「光を放つことが出来ない者」=「月」として生きるしか術がなかった人間の哀しみと怒りとを存分に魅せた。

 ここでは俳優・迫田孝也について書いていきたい。

 彼の仕事に触れる際、絶対に切り離して語れない人物がいる。大学卒業後に上京し「劇団 STRAYDOG」の舞台に立ちながら、2000年代初頭より、テレビドラマ等にも出演し始めた迫田だが、ある現場で俳優人生を大きく変える人物と出会う。

 その人物とはご存じ、三谷幸喜。三谷が脚本と監督を担った映画『ザ・マジックアワー』(2008年)のオーディションに合格し、AD役で出演した迫田は、次の三谷映画『ステキな金縛り』(2011年)にも参加。さらに2012年には舞台『三谷版 桜の園』で主人公に仕える上昇志向の強い従僕・ヤーシャを、映画『清須会議』(2013年)では蜂屋頼隆を演じている。

 三谷幸喜との出会いにより、キャリアを重ねた迫田は、2014年に三谷が劇作と演出を担当した新作舞台『酒と涙とジキルとハイド』にも出演。片岡愛之助と藤井隆が“二人一役”、優香が“一人二役”というシチュエーションコメディで、登場時間がもっとも長いジキル博士の助手・プールを演じ、業界の内外からアツい注目を集めた。

 多くの人が迫田孝也の名前を認知するきっかけになったのも三谷作品だ。2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』で迫田が演じた矢沢三十郎頼幸は、信繁(堺雅人)の幼なじみであり右腕でもあったものの、関ケ原の合戦では徳川勢として信繁と敵方になる運命を背負った人物。戦場で堺雅人と交わした彼の目の芝居は凄まじく、この時の演技も高い評価を得る。

 『真田丸』を経た迫田は着実に活動の場を広げていく。近年の映像作品で特に印象的だったのが三谷映画『記憶にございません』(2019年)の総理秘書官補・野々宮万作とドラマ『共演NG』(テレビ東京系)で演じたテレビ局プロデューサー・是枝育夫。両役ともどちらかというと“チャラい”キャラクターで、事態が深刻になってもどこかそれを面白がって俯瞰で見ているような人物。迫田の人物造形には何とも言えない説得力があった。

 そして本作『天国と地獄~サイコな2人~』である。

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