TV界から生まれたスターたちが多数ノミネート 第93回アカデミー賞受賞候補の代表作を追う
コロナ禍によって多くのアワードセレモニーが中止、もしくはリモート開催に追い込まれた2020年のハリウッド。その大トリを飾るアカデミー賞も同様に開催が危ぶまれたが、去る3月15日、なんとか無事に今年のノミネートが発表され、候補作が出揃った。詳報は他に譲るとして、今回はここ数年著しいTV界と映画界の人材流動に注目したい。テレビ黄金期“PeakTV”が、人気作家や映画スターのTVドラマ進出によって隆盛したのと同時に、TV界からも多くのスターが生まれた。近年のアカデミー賞はそんなTV側からやってきた才能の活躍が目覚ましいのだ。
記憶に新しいところでは一昨年開催の第91回アカデミー賞。主演男優賞は世界的大ヒット作『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックが受賞し、「移民の子供がアメリカンドリームを」などと書かれたが、TVドラマファンにとっては既に『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』(USAネットワーク)でエミー賞も獲得している演技派であり、オスカー受賞は当然の結果だった。この年の演技部門はオリヴィア・コールマン(『女王陛下のお気に入り』)、レジーナ・キング(『ビール・ストリートの恋人たち』)、マハーシャラ・アリ(『グリーンブック』)ら既にTVシリーズで代表作を持つ俳優たちの独占となった。
今年もこの傾向は顕著だ。作品賞の大本命『ノマドランド』を猛追する『プロミシング・ヤング・ウーマン』は今年のダークホース。本作で監督賞、脚本賞にノミネートされているエメラルド・フェネルは女優としても活躍しており、英国王室を描くNetflixの人気TVシリーズ『ザ・クラウン』では、チャールズ皇太子と不倫愛の末に結婚するカミラ夫人を演じている。
そんな彼女の才能を一躍知らしめたのが、ショーランナーを務めた『キリング・イヴ』シーズン2(BBCアメリカ)だ。MI5捜査官と殺人鬼の攻防を描くこのサスペンスドラマを、フェネルは前シーズンよりさらにキッチュでバイオレンスにパワーアップさせており、どうやらこのテイストはオスカー候補作にも受け継がれている様子。予告編のキャリー・マリガンを見た瞬間、『キリング・イヴ』に登場するサイコパス殺人鬼ヴィラネルそっくりだ! と戦慄してしまった。