アカデミー賞ノミネート作品を量産 A24躍進の背景にあったクレバーな戦略の数々

A24躍進のクレバーな戦略を読む

 2012年に会社が設立され、2013年に初めて映画作品を配給してから、わずか8年で圧倒的な数でアカデミー賞ノミネートを量産している会社がある。その会社の名はA24。今では、予告編でA24のレトロなロゴを見ただけで、同会社が制作する作品群のファンは、期待に胸を膨らませてチケット購入してしまうほどだ。今回は、そんな急成長を遂げてきたA24の映画界での戦略に迫っていきたい。

 そんなA24を立ち上げたのが、ビースティー・ボーイズのアダム・ヤウクとともに映画会社オシロスコープを立ち上げたデヴィッド ・フェンケル、独立系映画プロダクション、ビッグ・ビーチでプロデューサーをしていたジョン・ホッジズ、そして投資運用会社グッゲンハイム・パートナーズで働いていたダニエル・カッツの3人だ。

 ホッジズは、ビッグ・ビーチで働く以前にフォーカス・フィーチャーズに勤めており、世界中の映画祭などで映画の買い付けを担当しており、そこで出会ったのが、グッゲンハイム・パートナーズで働く前に別の映画会社で買い付けを任されていたカッツだった。彼ら2人は、映画や芸術に関して同じ価値や感覚を持ち合わせていたことから意気投合し、仕事以外でも友人に。ちょうどその頃に、カッツとともに働いていたのがフェンケルだった。2008年のリーマンショックや映画市場の変わり目を見て、彼らは3年間の会社設立の準備を経て、2012年に満を持して映画界の荒波に船を漕ぎ出して行った。

 過去に映画祭で映画の買い付けをしながら、優れた作品を見て目を養ってきたホッジズは「最初に、どんな内容の映画を世に送り出すことで、会社が定義されることになるかは理解していた」と自身が卒業したGeorgetown Universityでのインタビュー(参照:GEMA TALKS with Rich Battista interviews John Hodges (C '00), Head of Film at Jax Media.)で語った通り、彼らがA24の第1弾として世に送り出したのは奇抜な作品だった。フランシス・フォード・コッポラの息子ロマン・コッポラ監督が手がけ、度重なる問題で人気番組『チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ』を降板したチャーリー・シーン主演の映画『チャールズ・スワン三世の頭の中』だ。つまり、最初に自社を認知してもらう上で、誰も思いつかない少し尖ったような作品を選考して、他社との差別化を図ったようにも思える出発点だった。

 すると今度は、スプリング・ブレイク(春休み)の旅行費を得るために4人の女子たちを描いたハーモニー・コリン監督の映画『スプリング・ブレイカーズ』、セレブの豪邸に忍び込む空き巣強盗を繰り返す若者を描いたソフィア・コッポラ監督の映画『ブリングリング』、そして若者の繊細な感情と恋を描いたジェームズ・ポンソルト監督の映画『いま、輝くときに』など、若者の青春を捉えた映画を立て続けに公開し、興行面でも低予算の割に好成績を収め、若者の観客を呼び込むことにも成功した。そしてこの頃から、A24の若者を対象にしたブランディングが始まっていく。

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