『呪術廻戦』第21話、野球回は“神アニメ”の証拠? 作品における日常の尊さ

『呪術廻戦』における日常の尊さ

 そして幕を開けた、野球戦。何でもありのいかにも呪術師らしいプレイが全開だったが、今回の最大の魅力は、原作者・芥見下々が書き下ろしたアニメオリジナルのキャラクターの一言情報といっても過言ではない。つい先日発売されたばかりの公式ファンブックの売れ行きからも窺えるのが、『呪術廻戦』におけるキャラクター情報の需要の高さだ。しかも、結構どうでもいい好きな食べ物とか、そういう類のもの。貧乏性の三輪が食べるのを楽しみにしていたマンゴーを、真依が食べていたとか。勤勉な加茂が最近筆記体に挑戦しているとか。虎杖の家系ラーメンの感想が全国民を共感させるものだとか。

 先述のように日常回が少ない作品だからこそ、「じゅじゅさんぽ」しかり、このような普段の様子や彼らの学生らしい情報が本当に貴重になっている。ほのぼのとしたキャラクター同士の絡みや、年相応に野球を楽しむ姿は尊さ以外の何物でもない。なぜなら、もうこんな日常は彼らに二度と訪れないだろうから。

 野球の雰囲気で忘れられてしまったが、第21話の前半では前回真人が高専に忍び込んだ理由が明かされた。盗まれた、高専の所持していた6本の宿儺の指と特級呪物「呪胎九相図」の3体。これらは全て、五条悟を封印するために夏油の用意した“10月31日の渋谷”でのシナリオに向けた準備である。ハロウィンの渋谷といえば、とにかくコスプレをした人々が街に溢れかえることで有名。そんな中、再び呪詛師らと共に凶悪な特級呪霊が何かを企てようとしているのだ。一般人にとって大惨事が起きることは、簡単に想像できる。特にあの真人が人混みに放たれること自体、凶悪レベルのストレス案件だ。しかも、今回の高専襲撃の意図は盗み以外に、「五条悟を入れない帳」の練習をすることでもあった。これらの不穏な動き。第21話の野球回は、そういった意味でも虎杖をはじめとする全ての呪術師にとって、これから失っていくかけがえのない日常を、最後に噛み締めることができた“神回”だったのではないだろうか。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。推しは七海。InstagramTwitter

■放送・配信情報
『呪術廻戦』
MBS/TBS系にて、毎週金曜深夜1:25~放送中
Amazon Prime Video、dTV、Netflix、Paravi、U-NEXTほかにて配信中
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:朴性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
副監督:梅本唯
美術監督:金廷連
色彩設計:鎌田千賀子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:兼田美希、木村謙太郎
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:堤博明、照井順政、桶狭間ありさ
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:dugout
制作:MAPPA
(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp/#index

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