瀧本美織演じる沙也佳は本当に“モンスター妻”? 『知ってるワイフ』過ちを繰り返す元春

『知ってるワイフ』沙也佳はモンスター妻?

 沙也佳は本当に“モンスター妻”なのだろうかーー。

 『知ってるワイフ』(フジテレビ系)で描かれるのは夫婦のすれ違いとディスコミュニケーション。銀行員の元春(大倉忠義)は、言い争いの絶えない妻・澪(広瀬アリス)との結婚生活に疲れ果て、公園で出会った謎の男(生瀬勝久)からもらったコインで10年前にタイムスリップ。澪との出会いをスルーし、大学時代の後輩・沙也佳(瀧本美織)と結婚する未来を選ぶ。が、同じ支店に独身行員として異動してきた澪と仕事をするうちに、元春の心は揺れ、現在の妻である沙也佳との結婚生活にも暗雲が。

 第7話では、沙也佳がネットの裏掲示板に澪の誹謗中傷を書き連ねたことで起きたさまざまな事象が展開。それを受け、SNSでは元春擁護派と否定派、沙也佳の行動についてさまざまな意見が飛び交った。

 ここでは、元春が幸福な未来の象徴として選んだ妻・沙也佳について考えてみたい。

 沙也佳を見ていて1番強く感じるのは、彼女から醸し出される「渇き」の空気だ。有名企業を束ねる会長の娘として育ち、大学ではマドンナ的存在。結婚後は学生にチェロを教えながら実家の援助を受けた豪邸に住んで優雅な生活を送っている。え、こんな生活のどこから「渇き」が生まれるのかって?

 思い出してほしい。沙也佳が元春に「話がある」「早く帰ってきてほしい」とずっと伝えていたことを。

 発端は彼女がチェロを教えている学生から聞いた大学時代の同期の活躍。この件をきっかけに、沙也佳は自分の人生について考え始め、1枚のチラシを手にする。それはオーケストラの楽団員募集要項。それとなく両親に話しても、彼らは「音楽は趣味程度でいいんじゃない?」と真剣に聞いてはくれないし、夫である元春に相談しようと早く帰ってくるよう頼んでも、仕事を理由に取り合ってもらえない。

 一見、何不自由なく暮らしているように見える沙也佳だが、彼女の心の奥には「叶えられなかった夢=プロ奏者への思い」が渦巻いており、今はその夢に向かって一歩踏み出すべきか、現状の生活を維持していくか悩んでいる状態。しかし、1番の味方であり理解者であるはずの元春は、彼女の「渇き」にはまったく気付かず、未来を変える前の妻・澪に気持ちを向けている。

 さらに、認知症である澪の母(片平なぎさ)を探すためとはいえ、沙也佳に嘘を吐いてまで澪と行動を共にする元春。そりゃあ、妻である沙也佳がその事実を知った際に「夫が自分より建石澪を取った」と酔っぱらって荒れるのも当然である(酔った上とはいえ、ネットで他者への誹謗中傷を書き込むのは犯罪だが)。

 ご存じの通り、この『知ってるワイフ』の原作は同名の韓国ドラマ。日本版ではさまざまな箇所がアレンジされているのだが、沙也佳のキャラクター設定もそのひとつだ。

 韓国版での現在の妻・ヘウォンは非常に我が強く、観ていて正直「……それ、アカンやつ」と引いてしまう言動も多い。が、沙也佳はお嬢様気質でわがままなところがあるものの、基本的に悪気はない人。例えば、元春の同僚や妹家族と行ったキャンプで、宿泊する部屋の狭さや風呂の仕様、インスタントコーヒーの味に驚くのも、誰かを馬鹿にしてのことではなく、初めて触れるアレコレにカルチャーショックを受けたからだし、元春の実家関係に対しても明確な悪意はない。ただ、空気が読めないのと、自分が生きてきた環境が世間の常識だと思い込んでいる視野の狭さが彼女を必要以上に“女王様”に見せているのだ(いや、韓国版の現妻・ヘウォンが夫・ジュヒョクの両親を使用人のように見下す態度とか本当に怖いのよ)。

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