瀧本美織演じる沙也佳は本当に“モンスター妻”? 『知ってるワイフ』過ちを繰り返す元春
第7話、互いの家族関係のことで言い争いになった元春と沙也佳。元春は自分の母の白内障手術の結果を心配せず、父親のパーティーに姿を現さなかったことを責める沙也佳に冷たい口調で言い放つ「女神さまの召使いだもんな」……ああ、それ、言っちゃイカンやつ。
確かに、大企業グループの会長の娘として生まれ、金銭的には恵まれて育った沙也佳だが、彼女なりにさまざまなことを背負ってきたのだとも思う。何をやっても親の力だと言われ、ただの自分である前に「江川会長の娘」と前置きが付く人生。だからこそ、彼女は親の仕事とはまったく関係のない大学時代の先輩・元春と結婚したのだろう。素の自分を受け止め愛してくれるパートナーとして。
それなのに、当の夫から「女神さまの召使い」といきなり突き放されてしまったら。「そんな風に思ってたんだ」と失意の表情で部屋を出ていく沙也佳。バックに流れるショパンの「別れの歌」。そういえば、第1話で元春が澪との言い争いの後に家を飛び出した時もこの曲が流れていた気がする。
沙也佳は本当に“モンスター妻”なのだろうか。私はそうは思わない。彼女は、自分が主人公でない場所がこの世に存在することを理解できないのだ。誰もが成長するにつれ、自然に学習することを飛び越えて生きてきてしまった寂しい大人。もし彼女が“モンスター妻”になってしまったのだとしたら、それは沙也佳と徹底的に向き合い、コミュニケーションを重ねてこなかった元春にも原因がある。“モンスター妻”は夫の存在なしには生まれないのだから。
それにしても、元春はなぜ目の前にいる“妻”と向き合い、その人の笑顔を何よりも大切にしないのだろう……そんな風にモヤモヤしながらも見入ってしまうのがこの『知ってるワイフ』なのである。
■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p
■放送情報
木曜劇場『知ってるワイフ』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:大倉忠義、広瀬アリス、松下洸平、川栄李奈、森田甘路、末澤誠也(Aぇ!group/ジャニーズJr.)、佐野ひなこ、安藤ニコ、マギー、猫背椿、おかやまはじめ、瀧本美織、生瀬勝久、片平なぎさ
脚本:橋部敦子
編成企画:狩野雄太
プロデュース:貸川聡子
演出:土方政人、山内大典、木村真人
音楽:河野伸
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
(c)フジテレビ