『おちょやん』は朝ドラ版『ガラスの仮面』? 明日海りお×若村麻由美の再共演を願って
『おちょやん』(NHK総合)は、朝ドラ版『ガラスの仮面』かもしれない。
第10週「役者辞めたらあかん!」で描かれたのは、鶴亀家庭劇の旗揚げ公演「手違い話」での悲喜こもごも。喜劇=アドリブありきと信じ、舞台上で好き勝手に動き回る千之助(星田英利)と、さまざまな集団から集められた劇団員たちの芝居はどうもしっくり噛み合わない。
中でも、東京新派の元トップ・高峰ルリ子(明日海りお)は、初日の終演後に千之助から投げられた「五流役者」の言葉に怒り、「喜劇なんてやってられない」とその場を飛び出す。
翌日、彼女のもとを訪ねた千代(杉咲花)は、ルリ子が鶴亀家庭劇に参加することになった本当の理由を聞き、彼女の素顔に触れる。
若い女優の首を絞めて殺しかけたと噂され、東京での居場所がなくなったルリ子。が、その女優に主役の座と婚約者とを汚い手を使って奪われ、つい激昂して顔を叩いたというのがことの真相。噂を信じた婚約者からも捨てられ、それでも芝居を続けたいと彼女は大阪にやってきたのである。
さらに、滞在先の高級旅館にはお客として泊まっていたわけではなく、生活のため、仲居として働きながら鶴亀家庭劇の稽古に参加していたことも明らかに。稽古場で女王のように振舞っていたのも、すべてルリ子のなけなしのプライドからだった。
なんて不器用な人だろう。
本当は芝居が好きでたまらないのに、その気持ちをストレートに出せず、すべて軽々とやっているように見せながら、じつは水面下で誰よりも努力し、必死にあがいている。弱さを見せれば同情し、助けてくれる人もいるだろうにそれができない。自らの弱さを認めれば、そこで崩れてしまうからだ。
千代曰く「嫌味なほど完ぺき主義でちょっことの妥協も許してくれへん、ほんまに腹の立つくらい尊敬できる女優」のルリ子。ん、こういう人、前にもいたような……?
と、絶妙のタイミングで登場したのが千代の最初の師匠・山村千鳥(若村麻由美)だ。かつては理想の自分と現実の自分との間で葛藤していた千鳥も、今や晴れやかな佇まいで「打倒、千之助 !」に燃える劇団員たちに芝居の本質ともいえる言葉を伝える。
「演じるということは、役を愛した時間、そのもの」
つまり劇団員たちは、笑いの数で千之助に勝つことばかりを考えて、それぞれが演じるごりょうさんや女中、医師、芸妓について役を掘り下げ、自分の中に落とし込む作業をしてこなかった。これでは百戦錬磨の千之助に敵うはずもない。
千鳥の言葉でやるべきことが見えた劇団員たちは、自分が演じる役がこれまでどんな人生を歩んできたのか、どういう家庭環境で育ったか、どんな性格なのかを詳細に想像し、履歴書のように書き取っていく。