『ウチカレ』は“忖度しない”ドラマ? 北川悦吏子脚本に共通するヒロイン像とセリフの輝き

『ウチカレ』北川悦吏子脚本の魅力

「嵐の中にいるみたいで……」

 自由奔放な小説家・水無瀬碧(菅野美穂)のマシンガントークを目の当たりにした担当編集者の橘漱石(川上洋平)が、第1話で言ったセリフだ。毎回同じような感想を『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系/以下『ウチカレ』)には抱いている。冬ドラマが始まって1カ月が経つ今も、『ウチカレ』はジェットコースターのようなスピードで進行中。脚本家の作家性を全面に押し出した本作は、まさに視聴者へ“忖度しない”ドラマといえるだろう。

 水無瀬碧と2次元オタクの娘・空(浜辺美波)の目まぐるしい日々を描く『ウチカレ』は、今週で折り返し地点に着く。初回サービスかと思っていたメタ台詞も、水無瀬碧のぶっ飛んだ物言いも変わらない。それでも序盤より見やすくなったと感じるのは、物語が落ち着いてきたというよりも、私たち視聴者が『ウチカレ』ワールドに慣れてきたからだと思う。

 先週放送された第4話では、母娘ともども急展開を迎える。「ウチの娘はオタクだから彼氏が出来ないの~」と言っていた母・水無瀬碧こそ、恋愛が苦手だったのだ。思い返せば、イケメン整体師・渉(東啓介)から始まり、幼なじみの和菓子屋・ゴンちゃん(沢村一樹)にも一度フラれている。恋愛とは無縁だと思っていた娘・空は、渉と再び急接近し、隠れオタクの入野(岡田健史)とは趣味を通じて共鳴していく。

 『ウチカレ』を語る上で欠かせないのが、脚本家・北川悦吏子の存在だ。『ロングバケーション』(フジテレビ系)や『Beautiful Life〜ふたりでいた日々〜』(TBS系)、『オレンジデイズ』(TBS系)など、時代を象徴するラブストーリーを数多く手がけてきた。NHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』は賛否両論を巻き起こした一方で、今も熱狂的なファンが存在する。約2年ぶりのテレビドラマとなる『ウチカレ』の主人公・水無瀬碧には、物語を生む“創作主”として、娘を持つ“母”として、自身と重ねる部分があるのかもしれない。

 北川作品で共通するのが“強いヒロイン”像だ。ここで書く“強い”とは、口の強さや気の強さではなく、芯の強さを表す。彼女たちは逆境にも負けず、自分が信じた道への歩みを止めなかった。水無瀬碧の場合は“口の強さ”と“気の強さ”も兼ね備えているが、小説家としてのプライドや自身のブランディングへのこだわり、一人娘を守り抜く姿勢は、どんな崖っぷちの状況でも折れない。2次元オタクな自分に引け目を感じながらも、恋愛未経験に臆せず、好きな人に走り出す勇気を持つ空にも、北川悦吏子が描いた歴代ヒロインたちのDNAを強く感じた。

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