『ウチカレ』は“忖度しない”ドラマ? 北川悦吏子脚本に共通するヒロイン像とセリフの輝き
水無瀬碧の小説に対して、赤楚衛二演じる人気ボーカリスト・ユウトが「なんてったってセリフが良いじゃないですか」と語るシーンがあるのだが、北川作品にも同じことが言える。怒涛の展開つづきの中で、ときおり純度の高いセリフに息をのむことがあるのだ。それはまるで少女漫画のようにロマンティックで、入野が渡したビー玉のようにキラキラと光る。
特に第4話では、小説家・水無瀬碧を守るために奔走した漱石が、全てをかっさらっていった。
「碧さんは落ちこぼれじゃないです、ティファニーです」
「時の流れや、世の中のから騒ぎや、そういうものに負けない本物です」
絞り出すように語られたセリフの端々から、漱石が編集者として培ってきた感性が見える。敵陣に攻め込むナイトの如く映画関係者への説得に回った漱石は、水無瀬碧の前で感極まって泣いてしまう。天然たらしの本領が垣間見えた反面、そのギャップに心射抜かれた人もいるのではないだろうか。
視聴者の想像を遥かに超えてくるストーリーこそ、オリジナル脚本の醍醐味だ。『ウチカレ』は特に読めない。母娘共通の王子様だった渉が、初デートに“つけ鼻毛”を装着してきたのも、しかもそれが小学生から引きずっている初恋のためだなんて誰が予想したことか。
空は素直で純粋な心を持っているし、2次元オタクは悪くも珍しくもないし、そもそも中の人は浜辺美波だから彼氏くらい秒で出来る……と毎週言いたくなるのだが、そういう問題ではないのだろう。『ウチカレ』が駆け抜けた先に、どのような景色が広がっているのか。猛スピードの物語に振り落とされないよう、ドラマウォッチャーの一人として、最後まで食らいついていきたい。
■明日菜子
毎クール必ず20本以上は視聴するドラマ好き。Twitter
■放送情報
『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00放送
出演:菅野美穂、浜辺美波、岡田健史、沢村一樹、川上洋平、有田哲平、中村雅俊、福原遥、大地伸永、長見玲亜、吉谷彩子、中川大輔、東啓介ほか
脚本:北川悦吏子
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:小田玲奈、森雅弘、仲野尚之(AX-ON)
演出:南雲聖一、内田秀実
主題歌:家入レオ「空と青」(ビクターエンタテインメント)
(c)日本テレビ
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