『アノニマス』がネット社会に問う“何と戦うべきなのか” 視聴者を驚かせ続ける“仕掛け”も

『アノニマス』の視聴者を驚かせる“仕掛け”

「俺たちは何と戦ってんだろうな」

 万丞(香取慎吾)が、そうつぶやく声が頭から離れない。『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)第2話、サブタイトルは「消せない過去」だ。

ネット社会は、過去まで晒される未知の領域へ

 IT革命と呼ばれるインターネットや携帯電話、パソコンが急激に普及したのが1990年代。それからおよそ30年が経ち、振り返れば私たちは多くの情報をWeb上に蓄積に蓄積してきた。

 かつて軽い気持ちで始めたSNSを掘り返してみたら、こそばゆい気持ちになるような文章や写真が見つかる人も少なくないのではないだろうか。そんなタイムカプセルのように楽しむぶんには構わないのだが、それがある日突然いわれのないデマ情報に悪用されてしまったとしたら……。

 第2話では、ガソリンスタンドの店員に土下座を強要した事件の関係者として個人情報が晒され、誹謗中傷に苦しむ芹沢亜里沙(深川麻衣)の様子が描かれた。事実無根にも関わらず、関係者として特定されたのは、過去にアップした写真の服装が似ているからというだけ。

 亜里沙は匿名の投稿者たちと戦うことを決意するも、誹謗中傷の中には彼女が忘れたいと願っていた消したい過去まで含まれていた。誰にでも忘れたい過去や知られたくない事情はある。人によっては無知ゆえの失態、償ったはずの過ちが再び明るみに出てしまうことも。第1話の「罪」に続き「後ろめたさ」によって、被害者の戦意が喪失されていくのだった。

 対して、誹謗中傷記事を量産していたWebライターは、生きていくために必要なことなのだと「免罪」を主張する。ギリギリの生活で、誰かを傷つけているかなんて気にしていられない、と。被害者のはずなのに自らの過去に罪悪感を抱き、加害者となっている側が正当性を主張する。ネット社会が作り出すこのアンバランスな状況は、まさに未知の領域。

 特別な恨みがあるわけでもなく、ましてや事実を広く伝えたいという信念があるわけでもない言葉たちが、簡単に発信され、拡散されてしまう。そこにお金が絡めばさらに多くの人が手をのばす。万丞の言う通り、何と戦うべきなのかわからなくなる。

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