香取慎吾のヒリヒリするような表情が地上波ドラマで 『アノニマス』の先が読めない面白さ

『アノニマス』は新感覚ミステリー?

 香取慎吾が主演を務めるドラマ『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)の放送がいよいよ1月25日にスタートする。深刻化するSNSの誹謗中傷を撲滅するため、警視庁に新設された架空の専門部署“指殺人”対策室を舞台に、事件解決に向けて奮闘する新感覚クライムサスペンスだ。第1話オンエアに向けて、今回は見どころを紐解いていきたい。

今、描くべきテーマに向き合った意欲作

 本作は、『バイプレイヤーズ』シリーズ(テレビ東京系)や『40万キロかなたの恋』(テレビ東京系)などを手掛けた濱谷晃一プロデューサーによるオリジナル企画。テレビ東京の社内募集で300通を超える応募の中から選ばれたものだという。

 この瞬間も、つぶやかれているSNSでの誹謗中傷。現実に、自ら命を絶つことになってしまった方々もいるほど、見過ごせない事態になっているのは、多くの人が感じていることだ。タイムラグを極力減らし、現実に起こっていることをエンターテインメントという形で発信できるのが、テレビドラマの醍醐味。ならば今こそ、このテーマをテレビドラマで描くことで、少しでも良い社会となってほしい。そんな切なる願いが、この作品には込められている。

 初回の放送直前には、濱谷晃一プロデューサーと阿部真士チーフプロデューサーがYouTubeの生配信に出演し、ドラマ企画のきっかけや撮影エピソードなどを語るという。また、この生配信には主演を務めた香取も生電話で参加。SNSで香取への質問も募集していた。SNSを取り巻く影の部分を描きながら、本来のリアルタイムに繋がる便利で楽しい光の部分もフルに活用していこうという気概を感じる。

香取慎吾が表現する失望と怒り

 影と光というキーワードで見ると、本作では「香取慎吾」という表現者にもそれを感じることができる。きっと社会が香取に求めてきた「みんなのしんごちゃん」は、この社会の光そのものだ。「おっはー!」と一世を風靡した慎吾ママ、カツケンサンバなどのモノマネパロディコント、近年ではYouTubeでのしんごちん、ファミリーマートのお母さん食堂、ドラマにおいても『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(TBS系)の“両さん“など、明るくて楽しい気持ちにさせてくれるキャラクターを演じてきた印象を持つ人も多いはず。

 老若男女、誰からも親しみを持たれる香取は、一方で誰よりも“人”との距離を慎重に見つめている人でもある。芸能界で連絡先を交換しているのは、親友の山本耕史、キャイ~ンら、ごく限られた人数であることも有名な話だ。また、彼のアート作品を見れば、その繊細な内面を想像することができる。

 そんな香取が映画『凪待ち』ではギャンブルに溺れる男を演じて新境地を開拓したことで、話題を呼んだのも記憶に新しい。自分自身に失望しながら、愛する人を失った怒りに震える表情は、まさに迫真の演技だった。あれほど光り輝いていた人が、社会の影でひっそりと生きるような人を体現していたのだ。

 そして、本作『アノニマス』でも、香取は元相棒を失った傷を抱えた刑事・万丞に扮する。自責の念と怒りを原動力に真実を追い求めていく眼差しは、“国民的アイドル”の香取しか知らなかった人にとっては驚くほど鋭く見えるのではないだろうか。そのヒリヒリするような香取の表情が、地上波TVドラマで放送されるかと思うと実に楽しみだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる