香取慎吾が月曜夜10時の地上波テレビに帰還 『アノニマス』で匿名社会に“華麗なる逆襲”

香取慎吾、『アノニマス』で“華麗なる逆襲”

 月曜夜10時、地上波テレビに香取慎吾が帰ってきた――。

 1月25日、香取が主演するドラマ『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系、以下『アノニマス』)がついにスタートしたのだ。

SNSの先にいる“人”を思い出させてくれるドラマ

 匿名を意味する“アノニマス(anonymous)”を題した本作は、SNSの誹謗中傷問題に真っ向から勝負を挑む社会派サスペンス。実際、日本はSNSの匿名利用率が7割に上り、諸外国に比べても群を抜いているという(参照:平成26年版情報通信白書)。

 匿名だからこそ自由に意見を交わし合えるというメリットがある一方で、鋭い刃のような言葉が飛び交う場面は少なくない。こうした社会問題に対応するために、警視庁に“指殺人対策室”(通称「指対」)が設置されるところから物語が始まる。

 もちろん、これはフィクションであるし、「指対」は架空の対策室だ。だが、画面上で起きている事件は、あまりにもリアルで心が痛む。第1話で描かれたのは、モデルの卵・梢(八木莉可子)がSNSの誹謗中傷をきっかけに自ら命を絶つ姿。

 きっかけは1本の動画だった。故意に印象が悪くなるようなコメントを切り取った動画は、瞬く間に拡散され、本来の梢を知らない人のもとにも届く。当然、その動画だけを見た人は狙い通りに悪印象を持ち、そのままの感情で「けしからん」「調子に乗っている」とつぶやく。そうしたネガティブな言葉は、さらに人の好奇心を刺激して広がっていく。

 この炎上を仕掛けた元ファンの男は、自らの行為を「指導」だと言った。そして、この男に投稿を指示した梢のモデル仲間・有希(中田青渚)も「私じゃない……あの気の強い梢が(死ぬなんて)」と目を背ける。いずれも自分の言動が1人の命を奪うなんて思ってもみなかったという様子だ。

 その姿を見た香取扮する刑事・万丞は、こう語りかける。「強い人間なんていない。人は誰でも、この指1本で傷ついてしまう。あなたが思っている以上に、人は脆いものなんだ」と。それは国民的アイドルとして多くの注目を集め、数え切れないほどの言葉でつぶやかれてきた香取だからこそ重く響く、説得力のあるセリフだった。

 いつも笑顔でいても、どんなにタフそうでも、いくら多くの愛を得ていても、人はささいなきっかけで人は生きる力を失ってしまうものなのだ。SNSで言葉を発信するという行為は、インターネットの海に何かを流すのと同じで、投げた本人は発散されるかもしれないが、その言葉と思いはそこで消えるわけではない。流れただよい、やがて誰かのところに漂着するもの。

 SNSの先にいるのは、紛れもなく“人”なのだということを、このドラマでは思い出させてくれるのだ。万丞を演じる香取の静かで熱い眼差しは、数多の漂着物をかき分けて歩み続けてきた人の目そのもの。この万丞という刑事を演じることは香取にとって、一方的に言葉を受け取らざるを得なかった人たちの思いを汲んだ華麗なる逆襲といえるかもしれない。

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