大西流星主演『夢中さ、きみに。』実写化は成功? シュールな男子高校生の日常を輝かせる演出

『夢中さ、きみに。』実写化は成功?

 和山やまの短編集を実写化したドラマ『夢中さ、きみに。』(MBS、テレビ神奈川ほか)が始まった。

 本作は、シュールな男子高校生の日常を淡々と描いた、それでいてクスッと笑えるユーモアな青春群像劇。「このマンガがすごい!2020」オンナ編で第2位に選ばれ、第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞・第24回手塚治虫文化賞短編賞をW受賞。表現し尽くせない原作の独特な空気感を踏襲しながら、爽やかな青春ドラマに仕上げた演出と脚本が、原作ファン、またドラマから入った視聴者からも好評のようだ。

 『夢中さ、きみに。』はヒットする予感に溢れている作品だ。本作にはちょっと変わり者だけど、観ているうちにタイトル通り思わず“夢中”になってしまう男子高校生たちが登場する。メインとなるのは、マイペースでミステリアスな魅力漂う高校2年生の林美良(大西流星)と、中学時代にモテすぎて嫌気が差し、“逆・高校デビュー”を果たした同じく2年生の二階堂明(高橋文哉)。この2人と、彼らに魅せられた友人たちとのエピソードがオムニバス形式で描かれる。

 第1話では、林とSNS上で知り合ったお嬢様女子校に通う松屋めぐみ(福本莉子)、二階堂と席替えで後前の席になった目高優一(坂東龍汰)の交流が展開された。林とめぐみの物語「友達になってくれませんか」は、小説オタクのめぐみが読書の感想をSNSに呟くと、林の“仮釈放”というアカウントからコメントが届くところから始まる。仮釈放は看板から拾い集めた単語の画像ばかりが投稿されており、彼がどんな人なのか気になり出しためぐみ。ある日、めぐみは街で偶然にも“仮釈放”と思われる林に出会う。

 原作のめぐみはアンニュイな雰囲気があり、まるで大人の女性のようだが、昨年『思い、思われ、ふり、ふられ』で主演の1人に抜擢された福本莉子演じるめぐみは、どこかあどけなさが残る。箱入り娘で少しおどおどとした印象があり、そんな彼女が林に対しては勇気を振り絞って自ら話しかけたり、「友達になってくれませんか」と申し出る姿は応援せざるを得ない。対して、初のドラマ単独主演を飾る大西流星が演じる林は、小動物のようなかわいらしい見た目に反して、めぐみの行動には一切動じず、マイペースを貫く。だが、めぐみにふと見せる優しさや笑顔に胸キュン必至。何より2人の場面は秋の紅葉とともに、淡いフィルムで映し出されるので、まるで甘酸っぱい初恋を追憶しているようだ。原作を忠実に再現しているが、ドラマはより青春感が強い。

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