『SLAM DUNK』なぜいま映画化されるのか 原作を忠実に再現するアニメ化の流れが影響?

 漫画『SLAM DUNK』の著者の井上雄彦が、自身のTwitterで『SLAM DUNK』の映画化を電撃発表し、ファンの間で大きな話題となっている。

 『SLAM DUNK』は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)1990年42号から1996年27号まで連載された、井上雄彦による少年漫画。高校バスケを題材に選手たちの人間的成長を描き、国内におけるシリーズ累計発行部数は1億2000万部以上を誇る。

 1月7日にアニメーション映画化が発表されると、芸能界では『SLAM DUNK』ファンを公言していた俳優の松坂桃李をはじめ、要潤、高橋みなみ、中川翔子らが喜びのコメントをSNSに投稿。当時、手に汗握る試合の描写やバスケットボールに青春を懸ける登場人物たちに熱狂した世代からは、未だに圧倒的な支持を集め続けているのがわかる。

 そんな『SLAM DUNK』がこのタイミングで映画化されることについて、映画ライターの加藤よしき氏は原作者・井上の心境の変化があったのではと話す。

「『ジョジョの奇妙な冒険』や『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』など、『SLAM DUNK』と同時期に連載されていたジャンプ作品が再アニメ化で成功している例があるので、その流れに乗って、今の最新の技術で『SLAM DUNK』を再びアニメで観ることができるのはすごく嬉しいことだなと思います。昨今のジャンプ漫画の再アニメ化の方針でいうと、原作に対してものすごく愛を持っている人たちが作り手側に回っている印象です。だからこそ、非常に楽しみですし、そうそう変なことにはならないだろうなと。井上雄彦先生はかつて、『SLAM DUNK』のアニメに関しては、懐疑的な立場だったと思うんです。たとえば、同じく井上先生の漫画『リアル』で、あるキャラクターが『へっ、そんな広いコートがあるかよ』と、『スラムダンク』らしきアニメを見ながら語っていました。昨今、オリジナル展開をあまり入れず、原作をそのまま再現するアニメ化の形がスタンダードになってきています。技術も発展しているし、状況も変わってきました。多少なりとも批判的だった人が、今の時代にアニメ化をするのに許可を出したわけで、そこのスタンスの変化がワクワクするポイントですよね。相当説得して、それなりにちゃんとできるというのを示したからこそ、井上先生も許可を出したんだと思います」

 映画化発表とともに話題で持ちきりなのが「どこを映画化するのか」という問題だ。1993年から1996年にかけて放送されたテレビアニメでは、湘北高校のインターハイ出場が決まり、試合会場に出発するところまでが描かれている。

「平成テレビアニメ版にはナレーションがあったので、映画版は何食わぬ顔で『こうして全国大会への切符を手にした湘北高校は』と新幹線に乗るところから始まってもいいんじゃないかとも思うんです。『鬼滅の刃』もそうですし、2年前に公開された『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』もそうでしたが、劇場版のターゲットとされる観客はテレビアニメを観ている前提でした。『SLAM DUNK』ファンに向けて作るなら、いきなり全国大会からで問題ないと思いますが、本当に一からやるんだったら、主人公の桜木花道が湘北高校に入ってからですし、『SLAM DUNK』を読んだことがない人も知っている三井寿の名シーン『バスケがしたいです』の場面を観たい人もいるでしょうし。とはいえ、このシーンは全然バスケをしていないので、体育館の乱闘だけで2時間が終わっちゃうなと(笑)。こうしてどのエピソードを映画化するのかを考えるだけでワクワクしますね。また、『クローズZERO』と同じ方式で、桜木たちが去った後の数年後の湘北高校の話になる可能性もありますよね。『桜木っていうすげーやつがいたらしいぜ』と語り合う物語もあり得るなと」

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