年末企画:藤津亮太の「2020年 年間ベストアニメTOP10」 オリジナル企画が印象的な1年に

藤津亮太の「2020年アニメTOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2020年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、アニメの場合は、2020年に日本で劇場公開・放送・配信されたアニメーションから、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第13回の選者は、第33回東京国際映画祭の「ジャパニーズ・アニメーション」部門プログラミング・アドバイザーを務めたアニメ評論家の藤津亮太。(編集部)

1. 『魔女見習いをさがして』
2. 『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』
3. 『BNA ビー・エヌ・エー』
4. 『デカダンス』
5. 『GREAT PRETENDER』
6. 『体操ザムライ』
7. 『アクダマドライブ』
8. 『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』
9. 『D4DJ First Mix』
10. 『神様になった日』
※順不同

 1月放送の『映像研に手を出すな!』から始まり、新型コロナウイルス感染症の第一波・第二波を経ての『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の大ヒット、そして『呪術廻戦』と2020年のアニメシーンは、原作ものの話題が多かった。特に『鬼滅』は、そのヒットの勢いの凄まじさで、さまざまな作品が霞んで見えてしまうほどだ。だからこそ、ここでは原作を持たないオリジナル作品に注目したいと思う。2020年はバラエティに富んだ題材を、おもしろく料理したオリジナル作品が多かったのだ。もっと多くの人の目に触れてほしいと思う。

 オリジナル作品が目立ったのは、おそらくここ数年のアニメ業界の好況が原因のひとつだろう。右肩上がりで推移してきた広義のアニメ市場(エンドユーザーの支払額の合計)は、昨年(2019年)には過去最高に達している。この活況はさまざまな挑戦の源泉になっているのは間違いなく、その挑戦の中に「オリジナル企画」が多く含まれているのだ。

 そこで今回の年間ベストは、2020年に放送・上映されたオリジナル企画の中から印象的だった作品を順不同で10作品を選んでみた。

 『魔女見習いをさがして』(佐藤順一・鎌谷悠監督)はかつて『おジャ魔女どれみ』シリーズを見ていた女性3人が偶然出会い、それぞれが抱える壁を越えていく物語。一方『映画プリキュアミラクルリープ』は、「卒業」をモチーフに、一種の“プリキュア論”とでもいうべき作品。どちらもフィクションと観客の関係をめぐる作品だった。

『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』(c)2020 映画プリキュアミラクルリープ製作委員会

 『BNA』(吉成曜監督)と『デカダンス』(立川譲監督)は、どちらも「人」と「人ならざるもの」の共存を扱っている。しかもともに特殊な立場にいるヒロインが重要な役回りとなる。しかし案外、一番の共通点は、人々の思いが社会を変えていく瞬間を描いている作品ということかもしれない。そういう意味ではSFという体裁だからこそ、「2020年という時代の気分」がうまくすくわれた2作といえる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる