『ほん怖』×CMキャラクターの取り組みは成功? 『4つの不思議なストーリー』は心温まる物語に
土曜プレミアム『4つの不思議なストーリー~超常ミステリードラマSP』(フジテレビ系)は、約2時間の放送時間内で贅沢にも4本立てのオムニバスドラマを堪能させてくれた。
『ほんとにあった怖い話』(フジテレビ系)のスタッフとJRA日本中央競馬会がタッグを組んで制作されたスペシャルドラマで、出演者の土屋太鳳、中川大志、葵わかな、柳楽優弥、松坂桃李、高畑充希という豪華面々は何を隠そうJRA日本中央競馬会のプロモーションキャラクターで、TVCMにも起用されているお馴染みの面子である。
実話に基づく話のようだが、全話ともに視聴後に日常の何気ない幸せに気づかされたり、感謝できたりと主人公が大切な人からギフトを受け取るような結末で、少しばかり体験してみたくなるようなほっこりばかりだった。
『冬の奇跡』では、シングルマザーだった亡き母の幸恵(石野真子)の死に際に立ち合えず生前の母親は自分のことを許していないと思い込んでいる主人公・望月加奈子を土屋太鳳が演じる。あえて、淡々と、だけれどもどこかたどたどしさを残した土屋のナレーションが、彼女の後悔ややるせなさ、諦めモードで「自分自身の人生を生き切れていない」様子を滲ませていた。そして何より母親との間のわだかまりがずっと解消できずに残っており、自身の中で咀嚼し切れていないのであろう葛藤をよく現していた。コロナ禍で自分の夢を諦めるしかなかった人も少なくないだろう。ただ、想い続けてそこに向かって少しずつでも歩みを止めない限り、夢は遠退きはしないことを教えてくれたように思う。
続いて中川大志演じる大学生の武藤晴人が主人公の『最後の買物』は、ちょっぴり不思議なお話。人の好さそうな晴人だからこそ巻き込まれるベくして巻き込まれた「託しごと・おつかい」だったと言えるだろう。フリーマーケット期間中、ずっと大きな狸の置物を見ていたかに思えた老紳士(小野武彦)は実は晴人が信用に足る人間かどうか見極めていたのかもしれない。自分のこととなると自信のなさや相手への遠慮から“あと一歩”踏み出せない晴人の性格を思えば、狸の置物に売り手がつきそうになった時に咄嗟の嘘で「先約が入っている」と言って購入を断ったのは、考えられないような大胆なことだ。“人のために”動ける者のことをどこかで見てくれている存在はきっといるし、その行為は相手本人以外にその周囲までも幸せにすることができる、そんな広がりのある話だった。